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・・・ しばらくして、境が、飛び上がるように起き直ったのは、すぐ窓の外に、ざぶり、ばちゃばちゃばちゃ、ばちゃ、ちゃッと、けたたましく池の水の掻き攪さるる音を聞いたからであった。「何だろう。」 ばちゃばちゃばちゃ、ちゃッ。 そこへ、・・・
泉鏡花
「眉かくしの霊」
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・・・ と小宮山は傍を向いて、飲さしの茶を床几の外へざぶり明けて身支度に及びまする。 三 小宮山は亭主の前で、女の話を冷然として刎ね附けましたが、密に思う処がないのではありませぬ。一体この男には、篠田と云う同窓の友・・・
泉鏡花
「湯女の魂」