・・・地下道を入ったときから一列におかれて傍目もふらず席まで運ばれて来たような傍聴人席にも、どこやら、だれたざわめきが漲って来た。しきりに手洗いに立つひとが出来た。それは婦人席にもあって、計らぬ小競合を生じた。というのは、遂に二時も過ぎて倦怠が傍・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・賑やかに雑誌新聞に聞えていた思想の声、芸術の響き、精神活動の快活なざわめきが、すーいと煙のように何処かに消えて仕舞ったと感じるのだ。今まで、自分の魂のよりどころとなっていた種々のことは、此場合、支えとなり切れない薄弱なものであったのか。真個・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
・・・ ところで、ここに到ると、私はもう数万の読者の間にある認めがたい、微妙なざわめきの起るのを感じます。それは、私だって幸福は求めるけれど――だって……。ねえ。ざわめきの内容はそう私語している。 私には、この囁きがよく聴える。だから、自・・・ 宮本百合子 「私も一人の女として」
出典:青空文庫