・・・戦争挑発者にとって最もほくそ笑まれる状態は、ある国の人民の間に、はっきりとした根拠はないけれども、一つの国に対してしつこい偏見が永年の間に植えこまれているという状態である。ヒトラーは、フランスの指導者たちの間にあったひとつの偏見「イギリスぎ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・教会で結婚の儀式をあげる機会をもてずに、愛しあっていた男女が結合し、親となったということだけのために、若い母親は周囲の人たちのしつこい侮蔑と中傷とにさらされなければならなくなった。父である牧師は、自分の教会と牧師である自身の体面が全教区の前・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・その強情でしつこい歯の音の下で長い夜の間、私は物を書いていた。そして、くたびれて眠ると、夜中に枕元でその鼠か別の鼠かがあばれて、一度は顔の上をとびこされて、暗闇に愕然と目をあけたことがあった。 いま鳩麦をかじった鼠にも、格別の好意はない・・・ 宮本百合子 「鼠と鳩麦」
出典:青空文庫