・・・然しながらもし蛋白質と脂肪とについて考えるならば何といっても植物性のものは消化が悪い。単に分析表を見て牛肉と落花生と営養価が同じだと云って牛肉の代りにそっくり豆を喰べるというわけにはいかない。人によっては植物蛋白を殆んど消化しないじゃないか・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・何が故にその為に食物を得ないで死亡する、十億の人類を見殺しにするのであるか。人類も又動物ではないか。」「こいつは面白い。実に名論だ。文章も実に珍無類だ。実に面白い。」トルコの地学博士はその肥った顔を、まるで張り裂けるようにして笑いま・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ それは家畜撲殺同意調印法といい、誰でも、家畜を殺そうというものは、その家畜から死亡承諾書を受け取ること、又その承諾証書には家畜の調印を要すると、こう云う布告だったのだ。 さあそこでその頃は、牛でも馬でも、もうみんな、殺される前の日・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
〔冒頭原稿一枚?なし〕以外の物質は、みなすべて、よくこれを摂取して、脂肪若くは蛋白質となし、その体内に蓄積す。」とこう書いてあったから、農学校の畜産の、助手や又小使などは金石でないものならばどんなものでも片っ端から、持っ・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
・・・日本が世界第一の結核国であり、若い女の死亡率が最高であることも考えられる。 工場の昨今では、早出、残業、夜業は普通であるし、設備の不十分な下請け工場の簇出と不熟練工の圧倒的多数という条件は、工場内での災害をこれまでの倍にした。警視庁がこ・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ 農村の女の生活も実に辛苦に満ちていて、乳児の死亡率も多いし、トラホームなどもひどくはびこっている。経済的にゆとりのないことと、時間がないことが農村の女の向上を阻んでいるのだが、漁家の女が何とはなしその日暮しの生活の習慣に押しながされて・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・南フランスから出て来て第一の朝オペラ座の裏の焼鳥屋のようなところで飯をたべる、作家志望の若い貧乏な自分を描いていて、実に情趣ゆたかであった。ドーデエは妻と大変むつまじく暮して、部屋のこちらの端のテーブルについてドウデエが一枚小説をかくと小さ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 昭和七年に比べると、志望者は七万余人、入学者は二万人近く増して来ていたのであった。 女戸主 選挙法の改正のことは、急に実現されないことになった模様である。 戸主という者が資格として語られはじめたとき、・・・ 宮本百合子 「今日の耳目」
・・・持っている紙と印刷費用とは高騰する一方であるから、一時のように同人雑誌の刊行も困難になり、他面発表機関も困難になることから、雑誌を持っていてその誌上を割き与えることの出来る作家の周囲には今後も益々文学志望者がその習作と共に蝟集するであろうと・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・プロレタリア文学の仕事ではその誕生の時代から活動していた林氏は、出獄後、一つの大きい文壇的ァキウムとなって、内外の事情の錯綜と微妙な日常感情、作家的志望の感情にからんでよりどころを見失ったような状態にあった旧プロレタリア作家を吸いあつめ、文・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫