・・・とにかくそれでも三十疋が首尾よくめいめいの石をカイロ団長の家まで運んだときはもうおひるになっていました。それにみんなはつかれてふらふらして、目をあいていることも立っていることもできませんでした。あーあ、ところが、これから晩までにもう八百九十・・・ 宮沢賢治 「カイロ団長」
・・・金星音楽団の人たちは町の公会堂のホールの裏にある控室へみんなぱっと顔をほてらしてめいめい楽器をもって、ぞろぞろホールの舞台から引きあげて来ました。首尾よく第六交響曲を仕上げたのです。ホールでは拍手の音がまだ嵐のように鳴って居ります。楽長はポ・・・ 宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」
・・・おれはとにかく首尾よく降りた。少し下へさがり過ぎた。瀑まで行くみちはない。凝灰岩が青じろく崖と波との間に四、五寸続いてはいるけれどもとてもあすこは伝って行けない。それよりはやっぱり水を渉って向うへ行くんだ。向うの河原は可成広・・・ 宮沢賢治 「台川」
・・・クリスチアーナという女の愛に失望したマリオ・ルドヴィッチ中尉が従来の生活環境と感情とから脱却するために、アフリカのリビヤへ赴きそこの守備隊に加って土民征服に出かける。この経験から生きる目的を一変させた中尉ルドヴィッチは後を慕って来たクリスチ・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・という題で書いた牝豹とアフリカ守備兵のロマンティックな短篇を、シートンがその筋のまま物語っていることである。コフマンのこの本も猿が人間生活の感情にある理解をもつことは語っているが、アフリカの牝豹が守備兵を恋するというようなことは、科学の見解・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 例えば、遠い大洋をへだてたあちこちの島々に、守備としてのこされた一団の兵士たちは、どういう経験をしただろう。食糧事情で恐るべき経験をしている。しかし、ただ、食うものがない辛苦をしのいだだけであったなら、それがどんなに酷かったにしろこれ・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・』大人は自分の首尾を誇った。子供はそれを聞いて学んだ」のであった、と。 ゴーリキイの小学生生活は、断続した五ヵ月の後全くやめになってしまった。或る士官に再婚していた母のワルワーラが良人に捨てられた状態で死ぬと、祖父はその葬式を終えて数日・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ このときの数馬の様子を光尚が聞いて、竹内の屋敷へ使いをやって、「怪我をせぬように、首尾よくいたして参れ」と言わせた。数馬は「ありがたいお詞をたしかに承ったと申し上げて下されい」と言った。 数馬は傍輩の口から、外記が自分を推してこの・・・ 森鴎外 「阿部一族」
某儀明日年来の宿望相達し候て、妙解院殿御墓前において首尾よく切腹いたし候事と相成り候。しかれば子孫のため事の顛末書き残しおきたく、京都なる弟又次郎宅において筆を取り候。 某祖父は興津右兵衛景通と申候。永正十一年駿河国興・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
・・・更に健全な国内の壮丁九十万人を国境と沿海戦の守備に充てた。なおその上に、彼はフランス本国から二十万人を、ライン同盟国から十四万七千人、伊太利から八万人を、波蘭とプロシャとオーストリアから十一万人、これに仏領各地から出さしめた軍隊を合せて七十・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
出典:青空文庫