・・・行って、一週間も経ったかと思う頃、K町の家から転送された沢山の書簡に混って、一つ、私には判らない葉書が来た。 差出人は、同級会幹事の誰それとしてあり、宛名は、まぎれもない自分だ。けれども、内容がはっきり心に写らない。文句は、深田様がお産・・・ 宮本百合子 「追想」
特に、此処で述べなければならないような所感も持合わせません。〔一九二二年十二月〕 宮本百合子 「特に感想なし」
・・・ ところが、所管署築地警察署では、「働く婦人の夕べ」の集会届けも余興の興行届けもちゃんと手続を経て受けつけ、許可しておきながら、いよいよその日になって開会の辞を中條百合子が一分ばかり話したら、中止! 解散を命ず! と襲って来た。中條百合・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
この往復書簡集三巻におさめられている宮本顕治・宮本百合子の手紙は、一九三四年十二月から一九四五年八月十五日、日本の無条件降伏後、治安維持法が撤廃されて、十月十日網走刑務所から顕治が解放されるまでにとりかわされた書簡、百合子・・・ 宮本百合子 「はしがき(『十二年の手紙』その一)」
・・・ことを指摘している。書簡は更に不自由そうに「哲学者は世界を様々に解釈して来た、しかし重要なことは云々というフォイエルバッハ綱領の中のマルクスの言葉はそのまま芸術の場合にもあてはまります。芸術はこの世界をあるがままに描写していればよいのではあ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・今日までの日本文学の歴史と、その歴史の中にあって成育して来た自分たち作家一人一人の文学業績の内部から追求した発展の足どりとして、それ等の所感は書かれていなかった。いずれも、時代の急転を切迫して肌に感じ、作家も今までのようにしている時代ではな・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・今日までに刊行されているゴーリキイの作品の全集や、最近の文化、文学運動に対する感想集等の外に、今後はおそらく周密に集められた書簡集、日記等も発表され、ますます多くの人にゴーリキイ研究の材料と、興味とを与えることであろう。 既にソヴェト同・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・河豚礼讚、文芸雑誌の今昔などというところから、次第に様々の話題へ展開しているこの記事は、特に最後の部分、二・二六と大震災当時の心境についてそれぞれの出席者が所感を語っている部分に至って、読者の感想を喚び出す幾多のものを示している。徳田秋声、・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・読者は新年の初刊を看てここに至る時、縁起が悪いと云うかも知れない。しかし初春の狂言には曽我を演ずるを吉例としてある。曽我は敵討で、敵を討てば人死のあることを免れない。況や鴎外漁史は一の抽象人物で、その死んだのは、児童の玩んでいた泥孩が毀れた・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
・・・彼が幕府に仕えて後半世紀、承応三年に石川丈山に与えて異学を論じた書簡がある。耶蘇は表面姿を消しているが、しかし異学に姿を変じて活躍している、あたかも妖狐の化けた妲己のようである、というのである。その文章は実に陰惨なヒステリックな感じを与える・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫