・・・ 刻々切迫する情勢につれて、後から後からと出されたケレンスキー内閣の号外、指令、それに対して一層実践的な批判的な布告で大衆を革命へまで指導して行った共産党の印刷物、十数年後の今日でも吾々の心をヒッ掴んで鼓舞する力をもっている。ケレンスキ・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
・・・この合理化を非合理化だと叫んでいるのは、英国人の商魂という特殊性を没却した第三インターナショナルの指令のままに誤った戦法を繰返しつつある小数運動者ばかりではないかと。 ――君と私とは心理状態が違う。だからたがいに歩み合って協調しようと云・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・昭和二十年十一月の初旬、日本の帝国主義侵略戦争の動因の一つである財閥の解体命令が連合軍司令部から発せられた。三井、三菱、住友、安田の四大財閥が解消せられることになった。日本を破壊に導き、七千万の人口を限りない苦痛に陥入れている財閥が、解体せ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ 隊から来ている従卒に手伝って貰って、石田はさっそく正装に着更えて司令部へ出た。その頃は申告の為方なんぞは極まっていなかったが、廉あって上官に謁する時というので、着任の挨拶は正装ですることになっていた。 翌日も雨が降っている。鍛冶町・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・君だの、あの騾馬を手に入れて喜んだ司令官の爺いさんなんぞは、仙人だと思ったよ。己は騎兵科で、こんな服を着て徒歩をするのはつらかったが、これがあれば、もうてくてく歩きはしなくっても好いと云って、ころころしていた司令官も、随分好人物だったね。あ・・・ 森鴎外 「鼠坂」
出典:青空文庫