・・・話につれて閃く白眼。その顔のすべての曲線が勁く、緊張していた。博い引例や、自在な諷刺で雄弁であり、折々非常に無邪気に破顔すると大きい口元はまきあがり、鼻柱もキューと弓なりに張っている。ひろ子は自分が美術家であったら、この、独特な、がっちりと・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ 田舎に育った娘は、しずかなチラット白眼をつかってかんだぐるようなことが多く、都に育った娘は、人なつこい中にかならず幾分かのかざった、いつわったところが多いと思われる。 仕事をしなくてはいけない、仕事をしない人間は生き甲・・・ 宮本百合子 「芽生」
・・・抜け上がった額の下に光っている白目勝の目は頗る剛い。それに皺を寄せて笑っている処がひどく優しい。この矛盾が博士の顔に一種の滑稽を生ずる。それで誰でも博士の機嫌の好い時の顔に対するときは、微笑を禁じ得ないのである。 誰やらが、樺太のテレベ・・・ 森鴎外 「里芋の芽と不動の目」
・・・抜け上がった額の下に光っている白目勝の目は頗る剛い。それに皺を寄せて笑っている処がひどく優しい。この矛盾が博士の顔に一種の滑稽を生ずる。それで誰でも博士の機嫌の好い時の顔に対するときは、微笑を禁じ得ないのである。 誰やらが、樺太のテレベ・・・ 森鴎外 「里芋の芽と不動の目」
・・・付け焼き刃に白眼をくるる者は虚栄の仮面を脱がねばならぬ、高き地にあってすべてを洞察する時、虚栄は実に笑うに堪えぬ悪戯である。美を装い艶を競うを命とする女、カラーの高さに経営惨憺たる男、吾人は面に唾したい、食を粗にしてフェザーショールを買う人・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫