熊本高等学校で夏目先生の同僚にSという○物学の先生がいた。理学士ではなかったがしかし非常に篤学な人で、その専門の方ではとにかく日本有数の権威者だという評判であった。真偽は知らないが色々な奇行も伝えられた。日本にたった二つと・・・ 寺田寅彦 「埋もれた漱石伝記資料」
・・・という話である。真偽はとにかく、これと似た事は、精密器械などをあつかう人のしばしば経験するところである。また、一秒の十分の一というような短い時間でも天体観測の練習などしてみると、だんだんに長いものに思われてくるのである。 器械文明が発達・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・それで検閲はパスするが時々爆発が起こるというのである。真偽は知らないが可能な事ではある。 こういうふうに考えて来ると、あらゆる災難は一見不可抗的のようであるが実は人為的のもので、従って科学の力によって人為的にいくらでも軽減しうるものだと・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・いよいよはいり切らなくなって吐き出し始めたら餅が一とつながりの紐になって果てしもなく続いて出て来たなどという話を聞かされたこともある。真偽の程は保証の限りでない。 雑煮の味というものが家々でみんな違っている。それぞれの家では先祖代々の仕・・・ 寺田寅彦 「新年雑俎」
・・・ いわゆるスモークボールを飛ばして打者を眩惑する名投手グローブの投球の秘術もやはり主として手首にあるという説を近ごろある人から聞いた。真偽は別として、それは力学的にもきわめて理解しやすいことだと思われる。 中学時代に少しばかり居合い・・・ 寺田寅彦 「「手首」の問題」
・・・このようにして和歌の優美幽玄も誹諧の滑稽諧謔も一つの真実の中に合流してそこに始めて誹諧の真義が明らかにされたのではないかと思われる。 芭蕉がいかにしてここに到着したか。もちろん天稟の素質もあったに相違ないが、また一方数奇の体験による試練・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・と言ったという、真偽は別として、偽らざる心の誠という点でも、また数奇の体験から自然に生まれた詩であるという点でもまさにそのとおりである。しかしたしか太田水穂氏も言われたように、万葉時代には物と我れとが分化し対立していなかった。この分化が起こ・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・ そこの家には三代唖のひとがいたとか、三人の男の子が唖だとか、それに何か金銭につながった因縁話が絡んで、子供の心を気味わるく思わせる真偽明らかでない話が、その時分きかされていたのであった。 今のこっているのは、原っぱの奥の崖下にあっ・・・ 宮本百合子 「犬三態」
・・・仮装の精髄は、仮装しているものの中への感情移入であると文学は見ている。真偽の境がわれからぼやつくところにスリルがかくされていると見ているのである。〔一九三七年六月〕 宮本百合子 「仮装の妙味」
・・・又憲法が改正され、民法改正草案が示され労働基準法が審議されつつあります。旧い封建日本はようよう近代の民主的な人民の生活を持とうとしているようにみえます。社会のあらゆる面での男女の差別待遇は、憲法によって確認された基本的人権における男女の平等・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
出典:青空文庫