・・・憲法を制定して、自分達の政治の方向が民主的であるかのようにポーズすること、これは保守的な内閣にとってかくことのできない一つの仕事でした。憲法審議のための委員会に一人二人の婦人代議士が出席していたとしても、彼女達は具体的に人民憲法を作るように・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・ 現実の不条理からひきはなして、たとえばフランスのように小さい銀貨の上へ、友愛だの信義だの自由だのという文字を鋳りつけることは、云って見れば何とたやすいことだろう。 自分がほかならぬ一人の女として、この世代のうちに生きているというこ・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・ ところが五年の議会ではまたこの公民権がもりかえされて、ともかく衆議院では可決されるところ迄こぎつけたが、貴族院では審議未了となり、全国町村長会議では、婦人公民権案に反対を決議しているというのは、実に町村長などという地方的有力者に代表さ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ まことに女らしい天性によって、孝子夫人の情熱の主題は、日常生活の中での人と人との間の愛と信義、心意気と好みとの上にあつめられていたと思うのは誤りだろうか。孝子夫人は、何につけても本当に心のたっぷりさを愛していた方だと思う。自分も心のた・・・ 宮本百合子 「白藤」
・・・いては生存していても、歴史の進む方向を判断する精神において既に死んでいる者が、死して死なざる生命に甦らされて今日物を云うという場合、死者に甦らされた生者として語るべき唯一のことは、真実あるのみである。信義ある言葉のみが語るべき言葉である。・・・ 宮本百合子 「信義について」
・・・これは革命の信義の課題でもある。その半面、文学の分野ではどのように語るべきことをまっすぐに語り、検討しあう責任があるかという事実も学んだ――民主主義文学について枠内で語るのではなく、民主主義文学者としての責任において、日本の文学の諸問題につ・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・の中で、光彩陸離と、なり上り結婚のために友情も信義もけちらかして我利をたくらむやり手な美しい女性を描いた。家庭の純潔が言われても、社会がこれらの家庭の純潔を全うさせるだけの条件を一つも備えていなかったことはオルゼシュコの「寡婦マルタ」の哀れ・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・六月。信義について。七月。ある回想から。播州平野。八月。青田は果なし。九月。風知草。十月。琴平。現代の主題。風知草。十一月。郵便切手。図書館。風知草。単行本。『伸子』〔第一部〕。私たちの建設。一九四七・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・ そういう社会をのぞみ、信義をもち得る社会を求める心からバルザックは反対党――共和党に対して王党となったのか。 ユーゴーは共和党であった。そしてナポレオン三世の帝政布告に抗し二十年間亡命、一八七〇年普仏戦争による帝政崩壊後かえる。「・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・ 後藤末雄氏が『日本評論』に書いていられる論文「帝国芸術院を審議す」の文章をかりて云えば「爾来、星霜二十余年」今度社会正義に基くことをモットーとする近衛内閣によって、従来の「蚊文士」が「殿上人」となることとなった。「かかる官府の豹変は平・・・ 宮本百合子 「矛盾の一形態としての諸文化組織」
出典:青空文庫