私とじいやとは買物に家を出た。寒い風が電線をぴゅうぴゅうと云わせて居る。厚い肩掛に頸をうずめてむく鳥のような形をしてかわいた道をまっすぐにどこまでも歩いて行く。〔九字分消去〕ずつ買った。又もと来た道を又もどると一軒の足袋屋・・・ 宮本百合子 「大きい足袋」
・・・はなし 土のお宮にただ一人 妹を送りし姉娘 縫いあげし衣手に持ちて わびしく一人たたずめる、―― 土のお宮の城門に―― 「あけてたべのう門守の おじいさまよ」と願えども 青い着物に・・・ 宮本百合子 「悲しめる心」
・・・プロレタリア作家もこの示威に参加し、作家クラブではこの問題についての特別講演会が持たれた。プロレタリア作家たちは、この問題を段々科学的に考えはじめた。 プロレタリア作家は階級文化の前衛としてもとより、いざという時はペンを銃と持ちかえるこ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・初めは恐らく自分に日本の発達した警察網の活動ぶりを示威するつもりであったのだろう。けれども、現実の結果は、彼等の心配、周章の証人となったわけである。 メーデー警戒で、看守は四十八時間勤務をさせられている。今年のメーデーは特別神経過敏で、・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・の愛好となって賑やかに示威されている。 正宗白鳥の「日本脱出」は、一部の批評家によると、日本のニヒリストが、現代ロマネスクのチャンピヨンとしてあらわれた驚異の一つであったようだ。「脱出」という言葉を日本の文学の上に、ふたたびよむとき・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・禁酒宣伝の示威行列も見たよ、度々。 ――誰が示威行列をやるんだ。 ――ピオニェールだ。婦人労働者が示威したこともある。ピオニェール、コムソモール、自覚ある婦人労働者などはいろんな社会的規律の改善にいつも先へ立って活動する。禁酒奨励運・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・ 一九四六年の第一回メーデーの、あの勤労階級の意義を示威するよろこびにさえみんながまだ馴れていなかったような内気なところのあるメーデー。それから、メーデーに勤労者は自分たちの意志と希望とを表現するものであるということを、その歌声の響のな・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・ 生活そのものにつかみかかって来るような必然性に欠けた、インテリゲンチアの知的自慰にすぎぬ不安の文学が、当然の結果として夢想しているように強烈な、ヨーロッパ的立体性をもった内容の新しい心境文学を創り出すことができないでいる間に、いい加減・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・世界の働く婦人たちが手をつなぎ、プロレタリアート・農民の解放と、ソヴェト同盟の守りのために示威する国際婦人デーだ。 モスクワの三月といえば、まだ冬だ。ニーナは、寝室の下から長い防寒靴を出してはき、頭を暖かい毛のショールできっちりくるむと・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
・・・ それから音楽教育――音楽なんかでも、音楽の専門的な発達のための努力とその音楽を一般的に民衆に分からして行くこと、それから民衆自身が何か自分達の楽しみのために、或は集会の時に、示威行列の時に、自分達の楽隊で演奏するために、音楽の研究会と・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
出典:青空文庫