・・・ エンゼルフィッシの子が数尾同じ槽にいるのを見ていると、一尾が徐々に上昇し始めるとほとんど同時に他の仲間も上昇を始める。しばらくしてどれかが下降し始めると他のものもまた相前後して下降する。お互いに合図するのかまねをするのか、それとも外界・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・作者としての見とおしはあるものの、あらわれたところでは長篇の肉体そのものの螺旋形上昇とともに、その内側で社会主義リアリズムものびて来る、ということにならないわけには行かなかった。わたしにおいて社会主義リアリズムは、作品をつくる方法として、作・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・地上に待つもの』は、単に山田さんの意義ある過去の道どりを私達の前に示すばかりでなく、日露戦争後、急速に日本に資本主義が発展しはじめた時代に少青年期を迎えた勤労階級の或る種の若者たちは、どのように階級的上昇をしようと焦ったか。而もその焦慮はみ・・・ 宮本百合子 「『地上に待つもの』に寄せて」
・・・ 三 遠い郊外へ出勤する重吉の外出が、段々規則的になり、来客が益々ふえ、隠されていた歴史の水底から一つの動きが、渦巻きながらその秋の日本の社会の表面に上昇しはじめて来た。十月十日に解放された徳田・志賀の名で発表・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・商工業の急激な進歩、産業界全面の革新は一方に大英国の富をつみ上げてゆくと一緒に、その大都会の他の一方に猛烈な勢いで貧民窟と救民院の無力な活動と犯罪率の上昇とをうみ出した歴史的な一時代であった。心あるイギリス人は、この富と貧との新しい社会悲惨・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・先ずはじめの方に「賃金は月々に上昇し一年間にほとんど三倍以上になった。しかしそれと同時にヤミ価格も急激に上昇し、同じように一年間に三倍の上昇である」といわれている。こういわれると私たちは実に変な気がする。家計の苦しさは、千八百円ベースがある・・・ 宮本百合子 「ほうき一本」
・・・ ヒューマニズムはいよいよ上昇線を辿る時代が近づいて来たと舟橋氏は云っておられる。ある人々の主観の中での昂りでなく、人間生活の歴史的動向に沿うて上昇し発展されなければなるまい。子供を愛すことも出来ないで何のヒューマニズムぞやと云いすてる・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
・・・何故なら景気がよい、就業率は上向きだと云っても、工場に働いている人々の賃銀の上昇には残業割増、歩増などの時間外労働強化がついているのであるし、小売物価の急激な騰貴は結局、いくらかましな工場労働者の賃金をも今日では凌いでしまっている。実質賃銀・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・ 不熱練 熱練 志.片. 志.片.猶太人 ……4/2―5/2 6/3―8/4アラブ人……1/3―2/1 3/1 交通機関の血圧上昇がやや緩和された。フリート町だ。新聞・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・けれども、この頃を境として生活費の膨脹は熱病患者の体温計のように止めようとしても止まらない力で上昇した。しかし、労働賃銀というものはあらゆる場合に、物価高に追付くことは不可能であるから、二つの間の開きは破局的に大きくなって来た。このようにし・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫