・・・「カシオピイア、 もう水仙が咲き出すぞ おまえのガラスの水車 きっきとまわせ。」 雪童子はまっ青なそらを見あげて見えない星に叫びました。その空からは青びかりが波になってわくわくと降り、雪狼どもは、ずうっと遠くで焔のように・・・ 宮沢賢治 「水仙月の四日」
・・・ 5 水仙月の四日赤い毛布を被ぎ、「カリメラ」の銅鍋や青い焔を考えながら雪の高原を歩いていたこどもと、「雪婆ンゴ」や雪狼、雪童子とのものがたり。 6 山男の四月四月のかれ草の中にねころんだ山男の夢です。烏の北・・・ 宮沢賢治 「『注文の多い料理店』新刊案内」
・・・ 紺三郎なんかまるで立派な燕尾服を着て水仙の花を胸につけてまっ白なはんけちでしきりにその尖ったお口を拭いているのです。 四郎は一寸お辞儀をして云いました。「この間は失敬。それから今晩はありがとう。このお餅をみなさんであがって下さ・・・ 宮沢賢治 「雪渡り」
・・・を惜しまない人々でも、ノーベル賞、世界平和賞のために日本から送られるべき候補作品としてはただ一人も「細雪」を推薦しなかった事実である。炬燵の中の雪見酒めいた文学の風情は、第二次大戦後の人類が、平和をもとめ、生活の安定をもとめてたたかっている・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・ 傍机の壺に投げ入れた喇叭水仙の工合を指先でなおし乍ら、愛は、奇妙なこの感情を静に辿って行った。拘泥して居た胸の奥が、次第に解れて来る。終には、照子に対するどこやら錯覚的な愉快ささえ、ほのぼのと湧き出して来た。愛は、自分だけにしか判らな・・・ 宮本百合子 「斯ういう気持」
・・・『若い親衛軍』『赤い処女地』などという雑誌に、或る工場内の文学研究会から推薦された労働者の小さい作品が発表されることもある。 いきなりそこから、完成した芸術作品の生れることを期待するのは無理であるけれども、同時代の専門家によって作ら・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・を、推薦している。吉田健一は「イギリスの文学はイギリス人の生活のふち飾りとして、レースの如く美しくあらわれて来るという意味のことをかいていた。ところが、日本の私小説作家で、人生の方が文学のふち飾りでライフ・プロパアが無視されている。僕が日本・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・はそのことを積極的な評価として推薦されているわけだが、未完成なのはこの作者と作品のどこのことについてかと、考えさせられた。それは主として小説を書く技術のことではないのだろうか。何故なら、この作者は自分の描こうとする対象への当りかたの根本には・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・其れ故決して批評でもなければ、推薦でもない。まして芸術的価値を云々することなどは思いもよらない。一種の作品目録なのである。その便宜の為にも、曖昧な片仮名はやめて、英語は英語のままにして行った方がよかろうと思う。 先ず本国の愛蘭より却・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・梅崎春生氏がその作品をよまないで推薦したことについての自己批判も同じ日の文化欄に発表された。このことについて梅崎氏は、他の二三のところでも責任を明らかにしたが、同じく「軍艦大和」を「絶讚した」吉川英治、林房雄などからは何の発言もない。 ・・・ 宮本百合子 「作家は戦争挑発とたたかう」
出典:青空文庫