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・・・――もっとも技巧から言えばかなりに隙がある。夏目先生はカラマゾフ兄弟のある点をディクンスに比して非難された。その時私は承服し兼ねたが、しかし考えてみると私はディクンスの本体を知らない。それにドストイェフスキイには浪漫派らしい弱点がある。恐ら・・・
和辻哲郎
「生きること作ること」
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・・・メエテルリンクは好きですけれど、少しぼんやりしているようですね。――私の試みは失敗でした。何を言ってもサルドゥやピネロを演らなければならないのですもの。いつか若い美しい火のような焔のような女が来て私の夢みていたことをやってくれるでしょう・・・
和辻哲郎
「エレオノラ・デュウゼ」