・・・そのポストが大整理という苦しい仕事に当面していず、たんまり利権の汁につかっている実利の地位であったのなら、いまの腐敗した政党人たちが、何でおとなしい技術出の個人にそんな椅子をゆずっておこう! 民自党の本質的なこわさが、故人の運命をアーク燈の・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・ 政治というと、何か議論めかして、各政党の立会演説をするのが政治のようにおもわれますが、そうではなく、私たちの毎日の生活のなかに問題があるのであって、その問題を解決してゆくのが、政治なのであります。 私は社会のために、廉い本を作りた・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・もしだまされていないならあんな政党の立候補者の情勢はどうでしょうか。あんなラジオ放送は耳障りで聴いていられない。聴いている人があるから、私共のなかに遅れたものがあるから、あんな恥かし気のないことを申します。あれはある意味では私達がいわせてい・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・ この間うちから、ラジオはくりかえし、くりかえし、各政党立候補者の政見発表演説を送っております。うちにいて、働きながら、各政党の演説が開けるのは、まことに便利です。黙ってきいていると、政策が語られずに、詩吟をする候補者まで出て来ます。こ・・・ 宮本百合子 「幸福のために」
・・・プロレタリア芸術家たちは、マルクシズム・レーニズムの立場から制作を正統なリアリズムの骨格と肉づけとで組立てることに努力して来た。が、農業と工業との生産労働へ日夜接触して見ると、彼等は自身のリアリズムに多分の機械的マルクシズム、生産に対する知・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・に影響されて当時の青鞜社風の女性の自我の覚醒と、対立者としての男性および恋愛との格闘を主題とした「煤煙」は自然主義的なリアリズムと、主観的ロマンチズムのまざりあった作品であったと記憶します。その森田氏は長篇「輪廻」をかきました。これも自然主・・・ 宮本百合子 「心から送る拍手」
・・・それだけ、この『現代文学論』一冊は、評論としての正統な理論的追究と同時に、文学の芸術的因子にこまかくふれた論考であるということが云えるのだと思う。 この十年の間に、日本の文学は実に激しい風浪にさらされた。社会の屋台骨ごと揉まれている。著・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・ 明治も四十年代に入ったころ、平塚雷鳥などの青鞜社の運動があった。封建的なしきたりに反対して女も人間である以上自分の才能を発揮し、感情の自主性をもってしかるべきものと主張した。田村俊子の文学は明治の中葉から大正にかけて日本の女がどういう・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ 景山英子は、その生涯の間には、婦人の社会的向上の問題の理解を次第に深めて、明治四十年代「青鞜」が発刊された頃には婦人の社会的な問題の土台に生産の諸関係を見、婦人の間に社会層の分裂が生じる必然の推移までを見て、平塚雷鳥が主観の枠内で女性・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・そして、かつて動揺していた時代のアンドレ・ジイドの低迷的な作品や正統なロシア文学史には名の出ていないようなロシア生れの批評家シェストフの虚無的著作を、非常なとりまきでかつぎあげながら持ちこんできた。落付いて観察すると、これはまことに奇妙なや・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫