・・・十八年度最終の出版整備が公表されて程なくのことである。 今日の本やの気分というものを犇と感じつつ見ると「青眉抄」上村松園とある。「おや、珍しい本だこと」「さすがに装幀もようござんすね」そう云ったきり一冊しか出さないのである。・・・ 宮本百合子 「「青眉抄」について」
・・・十二名の被告のうち、最年少者である清水豊、元整備係、同分会執行委員は、午前の人定尋問のとき、まず次のように発言した。「即刻この公訴をとり消して頂きたい。その点について申しあげたい。私は私を育ててくれた両親、かずかずの恩師、諸先生たちに正直で・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・軍需産業の病的な拡大のために企業整備がはじまり、民間の日常必需品の統制が開始された。前年十月に成立した東條英機内閣はこの時期、彼等にとってもっとも甘美なファシスト独裁の夢をみていた。一九四三年健康状態如何にかかわらず私の・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・の姿においてその地方色の鮮やかさにおいて、または歴史的精美さにおいて力強く各自の芸術の中に活かそうと努力した。例えばメリメは「コロンバ」や「カルメン」において。ゴオチェは華美なアントニーとクレオパトラのロマンスの描写において。デュマはその歴・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・企業整備という名でいわれたその淘汰は、喘ぎながらも便乗していた街の小工場、小ブローカーをつぶして、より大きい設備と資本に整備した。戦争が進むにつれ、規模が大きくなるにつれ、戦争で直接儲けている日本の資本形態は、より大資本の形にすすみ、そのこ・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・合の活動と労働者階級の文化活動は、支離滅裂に流れてゆく商業的な文学の空気を貫いて文学サークルを生み出し、全逓従業員の文学作品集『檻の中』、国鉄の詩人たちの詩集、自立劇団の誕生につれて続々あらわれた堀田清美、山田時子、鈴木政男、寺島アキ子その・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・ ここに収められた諸論文は、即ち、日本プロレタリア文学運動が、当時の社会における客観的・主観的な事情によって理論的に最も高揚し、組織的にも整備せんとした第三期に属す時代において書かれたものであった。各論文は、当時の文学的動向に対して常に・・・ 宮本百合子 「『文芸評論』出版について」
・・・女子の能力は男子の七十パーセント以上である、近代重工業にもふさわしい、と云われて、女子の技術補導所があちこちにつくられ、女子整備員のオバーオール姿が婦人雑誌に出された時代である。 これも一銭切手であることを、わたしは忘れられなく感じた。・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
・・・企業整備によって自分の店や勤め先を失った男達は、みんな徴用されるということになった。昭和十九年からは学徒動員が行われ、この年には四百五十万人という勤労動員がされたのであった。昭和十四年に比べれば四倍以上の増加率であった。その中で学徒の動員は・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫