・・・人々の驚歎するような精励をもって、ゴーリキイは当時のロシアの若い作家たちの生育のために助力していたし、ソヴェト社会の建設に注目をも怠らなかった。そうではあってもイタリーはイタリーなのであるし、日常の皮膚から入って来るような生活的影響というも・・・ 宮本百合子 「長篇作家としてのマクシム・ゴーリキイ」
・・・発案者の宇原重役の最初の考えでは、国策に沿うと同時に社員に安心して精励して貰うための、「会社の利益から打算しても、相当の予算を組んでやって決して損とならない一石二鳥の仕事である」と思われたのであった。然し、現実は複雑で、事に当って見ると、先・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・これまで何千何万の若い健康な女性たちが職業について、そこで経験して来た苦痛や失望や努力、精励の価値を、さらに新しく理解して、それをもう一歩進んだ明日の女性の生きる態度として自分のものにしなければならないのではないだろうか。 何故ならば、・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・女性によって書かれたこの二種の本は、業績の相異とか資質の詮索とかを超えて結局は人類がその時代に潜められている様々の可能を実現し、花咲き実らすためには、どのような良心と、精励とが生活の全面に求められているかということについて、男性の生涯へも直・・・ 宮本百合子 「はるかな道」
・・・ 作家一人一人へ文学がその健全な成長のために求めている精励は益々大きく深まっているのだと思う。何故なら、私たちが日本の国民として、日々を現実がそのようなものとしてあらわれている世界史的規模で感覚してゆくためには、一層はっきりと自分たちの・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・世界の物理学が原子の問題をとりあげ得る段階に迄到達していたからこそ、ポーランドの精励なる科学女学生の手はピエール・キュリーの創見と結び合わされ、彼女の手もラジウムの名誉ある火傷のあとをもつようになった。愛は架空にはない。原子が、人間の幸福の・・・ 宮本百合子 「まえがき(『真実に生きた女性たち』)」
・・・ この職人衆のリアリスティックな場面に対して、二組の恋人たちが、森の中で精霊たちのいたずらにあってうきめをみるおかしみが、巧みに配置されている。しかし、きょうのわたしたちは、「真夏の夜の夢」の変化の多様さ、飽きさせなさの間にやっぱりルネ・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
・・・そして十七歳の年からジュリアンの画塾に通いはじめ、最後の七年間、彼女の豊富な情熱の唯一の表現、対象として画家としての刻苦精励がつづけられたのであった。彼女の最後を名誉あらしめた「出あい」は、今日世界名画集からはとりのぞくことのできないリアリ・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・母親も油井もいやで、がっかりして、風も身に沁みる、空の高さも、そこに飛び交う蜻蛉も身に沁みる。魂が空気の中にむきだしになっていた。 長い時間が経った。 みのえは、背後で荒っぽく草を歩みしだく跫音を聞いた。みのえは自分の場所からその方・・・ 宮本百合子 「未開な風景」
・・・ なるほど、これは尤なことだとして読んだ私どもは、翻って、第一、天皇というところに、その特権の身分が世襲であり、人間としての資質如何を条件ともせずに、天皇たる世襲者が、憲法改正から法律・政令・条約の公布以下、政治上の実権の重要な点を押え・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
出典:青空文庫