・・・これは直接恋愛についてではないが、たとえば武者小路実篤氏が今日の時代の農村の実状からとびはなれて、二宮尊徳をその誠意や精励、慧智の故にだけ、その美徳を抽象して賛歎しているような悲しき滑稽が出現するのである。 欧州の大戦と婦人の職業戦線の・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・そこでこの用法が神にまで押しひろめられて、父と子と聖霊が神の三つのペルソナだと言われる。しかるに人は社会においておのおの彼自身の役目を持っている。己れ自身のペルソナにおいて行動するのは彼が己れのなすべきことをなすのである。従って他の人のなす・・・ 和辻哲郎 「面とペルソナ」
・・・釈尊やイエスはこれを解いて、多くの精霊を救う。この救われたる衆生が真の人生を現わしたか。救われずして地獄の九圏の中に阿鼻叫喚しているはずの、たとえば歴山大王や奈翁一世のごとき人間がかえって人生究竟の地を示したか。これは未決問題である。宗教の・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫