・・・「人たれか、われ先に行くと、たとい、一分なりとも、その自矜うちくだかれて、なんの、維持ぞや、なんの、設計ぞや、なんの建設ぞや。」さらに、笑ったならば、その馬づらを、殴れ! あなた知っている? 教授とは、どれほど勉強、研究しているもの・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・また、弘化二年、三十四歳の晩春、毛筆の帽被を割りたる破片を机上に精密に配列し以て家屋の設計図を製し、之によりて自分の住宅を造らせた。けれども、この家屋設計だけには、わずかに盲人らしき手落があった。ひどい暑がりにて、その住居も、風通しのよき事・・・ 太宰治 「盲人独笑」
・・・いま住んでいる武蔵野町の家は、三年まえ、杉野君の設計に拠って建てられたものである。もったいないほど立派なアトリエも、ついている。五年まえに父に死なれてからは、母は何事に於ても、杉野君の言うとおりにしている様子である。杉野君の故郷は北海道、札・・・ 太宰治 「リイズ」
・・・天然の設計による平衡を乱す前には、よほどよく考えてかからないと危険なものである。 寺田寅彦 「蛆の効用」
・・・建築が設計者製図者を始めとしてあらゆる種類の工人の手を借りてできあがるように、一つの映画ができあがるまでには実に門外漢の想像に余るような、たくさんの人々の分業的な労働を要するのである。そうしてそれが雑然たる群衆ではなくて、ほとんど数学的「鋼・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ この映画の頂点はヒロインが舞台で衣裳をかなぐり捨てブロンドのかつらを叩きつけて煩わしい虚偽の世界から自由な真実の天地に躍り出す場面であって、その前のすべてのストーリーはこの頂点へ導くための設計であるように見える。一九〇九年型の女優が一・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」
・・・物理学実験に使われる精密器械でさえも設計のまずい使ってぐあいの悪いようなのはどことなく見た格好が悪いというのが自分の年来の経験である。 動物でも、なんとなしに不格好に見えるのはやはり現在の地球上に支配する環境の中で生活するのに不便なよう・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ ただわれわれ科学の畑のものが見ると、二マイルもの遠方から水路を導くのに一応の測量設計もしないでよくも匆急の素人仕事で一ぺんにうまく成効したものだという気がした。また「麦秋」という訳名であるが、旱魃で水をほしがっているあの画面の植物は自・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・それからまた県土木技師の設計監督によるモダーン県道を徳川時代の人々が闊歩したり、ナマコ板を張った塀の前で真剣試合が行なわれたりするのも考えものであるが、これはやむを得ないことかもしれない。 これに比べて現代を取り扱った邦画はいくらか有利・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・もっともその日は特に蒸し暑かったのに、ああいう、設計者が通風を忘れてこしらえた美術館であるためにそれがさらにいっそう蒸し暑く、その暑いための不愉快さが戸惑いをして壁面の絵のほうにぶつかって行ったせいもあるであろう。実際二科院展の開会日に蒸し・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
出典:青空文庫