・・・従って、文学における自然の範囲は、街頭、公園、近郊に多くとどまっており、あるいは通俗小説の場面としては落すことのできない近代スポーツの背景として北国の雪景、またはドライヴの描写としての京浜国道がとり入れられ、いずれにせよ、大部分享楽的消費的・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・わたしたちの未来への設計としてそのところが知りたい。 出版危機という表現で出版界の再編成、より大きくつよい企業へのふるいわけがはじまってから、雑誌は、大部分、編集の上にそれぞれ販売面からのもがきを示した。テラス、ロマンス類が、もとの・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・では、この社会の世俗の通念でいい生活と思われている小市民風な生活設計を守るために、本能も馴致されなければならないものとされ、そのために文学がつかわれることとなった。文学がその作家の文学的性格の強靭さの故によるというよりは寧ろ、世間を渡る肺活・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・の中で語られているいい生活の規準は、テニス・コートもある洋風の家と丈夫で従順な妻と丈夫なほどよい数の子供達に基礎をおいているのだが、文学の本来は、そのような一個の男の欲求の肯定から出発した設計の描写ではなくて、現代の常識が何故そのような図取・・・ 宮本百合子 「生態の流行」
・・・そういう気質はいかにも設計家にふさわしい特徴をもっていて、西洋の諺に弁護士と作家と建築家の妻にはなるな、とある、そういう几帳面さを、一面にもっていました。 仕事は事務所で、というのが終生の暮しかたでした。事務所では忙しがっているからとい・・・ 宮本百合子 「父の手帳」
・・・注意深く設計された街道が、幾マイルも幾マイルも切れ目なく街路樹に包まれている。一日じゅう歩いて行っても、立派な畑に覆われた土地のみが続き、住民たちは土産の織物で作った華やかな衣服をまとっている。さらに南の方、コンゴー王国に行って見ると、「絹・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫