・・・資本主義社会の被搾取階級が苦しんでいる苦しみから、具体的に経済的に解放してくれるものは、線香の煙で黒光りになった一個の仏像ではありません。減俸はお釈迦の考え出したことではありません。従ってお釈迦の力で減俸案をどうも出来なかった事実は、現実に・・・ 宮本百合子 「反宗教運動とは?」
・・・これはヒューマニズムがそれに先行した能動的精神の提唱に比べて、はるかに我々の日常生活に於て社会的に、文化的に作用を及ぼす実践の可能を含んでいる特徴的な点である。ヒューマニズムは、ファシズムに明瞭に対立している。ファシズムの強権と横暴から人間・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムの諸相」
・・・ この次の機会にこそ、日本は漁夫の利をしめるか、さもなければ大漁祝いのわけ前にありついて、前回でものにしそこねた北や南での領土的野心をみたすことができるという潜行的な宣伝が行われている。あれこれと形をかえて、民間にはいりこんでいるもとの・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・これまでは年期奉公に出されていたような若い農村の娘たちが、どんどん旋盤をつかい、電気穿孔機をつかって精密機械の製作に従うようになった。それらの機械の精巧さ、小学校を出たばかりの女の子でも使えるまで高度に調整され、単純化された分業の過程という・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・をラジオで知るそのこともよろこびをもってかかれているのである。 今日私たちの身近にも、専門は科学であるが、文学方面の作品をもかいているという何人かの人達がある。例えばパヴロフの「条件反射」を専攻した林髞氏は木々高太郎氏であり、電気特許事・・・ 宮本百合子 「文学のひろがり」
・・・自然発生的に日本プロレタリア文学運動の先行的任務を負った「文戦」の作家たちは、ロマンチシズム、未組織な個人的センチメンタリズム、政治的行動理論の不決定さで右や左へ揺れながら、それでもある水準に達した技術で、黎明期のプロレタリア文学活動に重大・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・そして、これは人類がその中で出口なしに廻転しているところの円周ではなくて、そこでは各々の後から来る円周が先行する円周よりも広汎であるところの螺旋である。吾々の世紀は十六世紀に対して、後から来る諸世紀がどういう点において十九世紀の野蛮性を見る・・・ 宮本百合子 「ベリンスキーの眼力」
・・・だが周囲の現実は遙にそれ以前と云おうか、先行的な条件で制約されてしまっている。先ず、各国の文化、批評を活溌に交換するために必要な雑誌や書籍類の自由な国際的購読が今日では一般人にとって困難になって来ている。一般生活に必要がないと認められる種類・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
・・・ だが、この陰翳に富んだ、逆説的な分子のこもった会話は、当時のゴーリキイが民衆、学生、デレンコフや彼自身の関係に対して抱いていた複雑な感情の深淵を何と微妙な閃光で我々に啓いて見せることであろう。 これは、ゴーリキイが、セミョーノフの・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・健省設立を提案するという興味ある形で今日とりあげられている青年男女の体格低下の問題や、婦人労働者の退職手当金の問題、又頻々たる心中事件の意味など、恋愛論が、恋愛論の枠の中を廻っていただけでは解決し得ぬ先行的事情が、附随してとりあげられなけれ・・・ 宮本百合子 「もう少しの親切を」
出典:青空文庫