・・・待っていず、書いて、出してしまいましょう。先週の火曜日には、いろいろのエハガキをなるたけ沢山御覧になったらと思い、わざと私の手紙は書かなかったから。―― お体はいかがでしょう。中川へ夜着のことで電話をかけたら、まだやっぱりそちらのおカユ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・事務所の粗末な郵便棚を、私共は一月に三四度見にくるのだが、先週もその前の週にもあった男名宛のハガキなどが今日迄も受けとられず、ざらついた棚の底にくっついているのを見ると、一種の心持を感じる。この水田達吉とたどたどしげな横文字で書かれた男はど・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・ 先ず火曜日は、先週の日曜の朝代えた下着や、敷布や襯衣その他の洗濯日、午後からは訪問と云う日割です。大きいものは一まとめに袋に入れて、朝来ることに定めてある洗濯屋に渡し、小さい手巾とか、婦人用の襟飾、絹のブラウズと云うようなものは、皆、・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・な社会層の中に、プロレタリアとして歴史を推進させてゆく自覚ある労働者部隊の革命的な任務が、はっきりさせられると一緒にプロレタリア文学は、アナーキストの権力否定の文学とも違うし、貧窮文学でもないし、下村千秋のようなルンペン・プロレタリアートの・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・宮本百合子選集第一巻、同第三巻。新しい婦人と生活。真実に生きた女性たち。婦人と文学。一九四八年中心的な執筆は、小説「道標」である。民主的文学の分野には、昨年末から批評と創作の協力的前進の問題が起っており、勤労者の・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・新日本文学会は勤労者文学選集二冊、新日本詩集三冊、新しい小説集三冊を刊行することができた。 一九四八年十二月に東條をはじめとする戦争首謀者たちの処刑が行われ、その犠牲において児玉誉士夫のようなファシズム文化の運動に関係ある日本のファシス・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・ 後記 一九四九年四月。選集第十巻に収録するためにこの文章をよみかえした。そして、作者と読者とのためにこんにちでは、短い附記の必要を感じた。川端康成は一九一四年ころから作品をかきはじめ、一九二二年「伊豆の踊子」によって、独特・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 若きヴェルテルの悩みや名家選集をもって、藍子は二年の間尾世川に教えて貰ったと云うより寧ろ教えさせて来たのであった。 三月の第一火曜日の午後、藍子は小日向町へ出かけて行った。尾世川が牛込の方から此方へ越して来てから、藍子も、同じ・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・例えば、一九二二年に楠山正雄氏とシュニツレル選集を編輯してその印税の全部を敗戦国の老文豪に送ったことも、単に山本氏が独文出身だからというだけの内面の動機ではないであろう。戯曲家としての氏が、自作の上演に当って劇場側の態度がわるい場合、勝手に・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・死傷何人。先週より何%増。「娯楽ドライヴは果して窃盗罪を構成せざるや」 ロンドンで自動車運転許可は郵便局へ五シリング払い込めば貰える。だが運転すべき自動車そのものはハロッズで売っている玩具でも五シリングよりは高い。 近代倫敦ボー・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫