・・・その映画でもやはり人間の努力の姿を語ろうとして同じような山道を攀じ登る姿を繰り返し繰り返し見せた。山の岩石の構造の相違やそこを登攀する技術の相違や雪の質、氷河の性質等に就いてカメラがもっと科学的に活用されていたらばあれだけの長さの内容をもっ・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・ たださえ集団農場化に反対な富農が女房までソヴェト役員にとられたと勘違いした揚句、村の反革命的分子を煽動して指導者を石で打殺す結果になったとしか思われない。 カターエフの誤謬は階級的闘争を大衆的に表現せず、個人の心理描写で説明しよう・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・==総同盟系の反革命的労働者を煽動して、一定の公共物を襲撃させる。すると、直ちにそれを共産党の蜂起とデマり、鎮圧の名目で軍隊を繰り出し、市街戦で革命的労働者、前衛を虐殺し、それをきっかけに戒厳令をも布く。そのような計画が予定のうちにあるキッ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ 奥から出て来た主人らしい人が、大鳥居のきわから左へ入って、うねうね山道を歩いてゆけば、ひとりでに公会堂の上へ出るからと教えてくれた。 暖かい十月の六日で、セルで汗ばむ天気であった。弁当の包を片手に下げ、家のわきから左に入ると、男の・・・ 宮本百合子 「琴平」
・・・平地の健脚は、決して石ころの山道で同様の威厳を持ち得ない事を発見致しました。 紐育あたりから遊びに来て居ります人々でも、矢張り私と余り違わない程度と見えて、深い山等へ出かける者は少うございます。従って朝夕、美くしく着飾った女達が、都会に・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ こうして私たちは少しずつ少しずつ、時にはのぼった山道をまた下るような足どりにも耐えて、自身の成長と歴史の成長とを学び、もたらして行くのだと思う。〔一九四二年一月〕 宮本百合子 「時代と人々」
・・・ すべての権力をソヴェトへ 餓えた農民と労働者は不決断な臨時政府がついにブルジョアの手先で彼らのものでないことを理解し、兵士は塹壕から、フロックコートを着てやって来る社会民主主義の煽動者をぼいこくった。ケレンスキーが、星条旗のひるが・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・チフリスへはコーカサス山脈を横断するグルジンスカヤ山道を自動車で十時間余ドライブして行く筈であった。コーカサスの雄大な美を知りたいと思えば、このグルジンスカヤ山道をおいてはない。そう云われている絶景である。ウラジ・カウカアズが、その起点とな・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・ 夢一、三角の家 雪がある。船頭のような男と二人歩いて行くと、向うにずらりと並んだ長屋が見える。一間ずつ一かわこう一側並んで居。 一間のなかにいろいろな人間がいろいろにして暮して居るのが見える。夫婦さし向いで・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・民同、共産党の煽動によるものではなく、吉田内閣や三田村氏の陰謀によるものでもありません。たとえ命はあっても獄中で老いさらばえて、あの時真実をいっておけばよかったと思うでしょうから、ここに真実を申しのべました。」竹内の陳述は僅か五分ですんだ。・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫