・・・近隣の三部落も全農支部を組織して勇敢に闘争している。中でもこの部落は四・一六と二・一六とに犠牲者を出した。組合員は地主との闘争の焦点をハッキリ土地問題において勇敢にやっているのだ。部落の小作料はもう五年間も未納だ。 × この一見・・・ 宮本百合子 「飛行機の下の村」
・・・神は全智全能だと書かれている。けれども、妙なことが一つある。それは、その厚い聖書を書いたのは神自身ではない。みんな神の弟子たちだということだ。ヨブだのマタイだのと署名して弟子が書いている。全智全能だと云いながら、して見ると神というものは本は・・・ 宮本百合子 「モスクワの姿」
・・・維持員にはなれないが半年分誌代前納で直接購読ならしようという方があれば、これも大切な支持者です。いつも、われわれはその額の多少によらず心からわれわれの出版物を守ろうとしてされる経済的援助を歓迎します。 さて、就職の件ですが、お手紙に書か・・・ 宮本百合子 「「我らの誌上相談」」
・・・彼はそれに力を得てイエスの復活を説き立てる。哲学者は急に熱心になって霊魂不滅の信仰が迷妄に過ぎないこと、この迷妄を打破しなければ人間の幸福は得られないことを説いて彼を反駁する。彼は全能の造物主を恐れないのかときく。哲学者はこの世界が元子の離・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・否、余裕があるなら全農も全商もよい。要は「人間の本領」を失わない事である。この決心のもとに虚栄と獣性と罪悪との渦巻く淵を彼岸に泳ぎ切る。若きダンテはビアトリースの弔いの鐘に胸を砕かれてこの淵に躍り入った。フロレンスの門の永久に彼に向かって閉・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
・・・宗教の信仰に救われて全能者の存在を霊妙の間に意識し断乎たる歩武を進めて Im schnen, Im guten, Im ganzen, に生くべく猛進するわが理想であると言ったら、ある人は嘲笑した。我れに取っては最も明白合理なる信念である。・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫