・・・云々と。粗暴な狼たちは、このアキレス腱めがけて、菅氏にとびかかり、かんでかんで、遂に彼の勇気を、かみちぎってしまいました。 不幸な菅氏は、その良心と正義感と、勇気にかかわらず、自身が客観的なよりどころとし得る単純明白なリアリティーの・・・ 宮本百合子 「若き僚友に」
・・・これを文として視ることをゆるす人でも、古言をその中に用いたのを見たら、希世の宝が粗暴な手によって毀たれたのを惜しんで、作者を陋とせずにはいぬであろう。 以上は保守の見解である。わたくしはこれを首肯する。そして不用意に古言を用いることを嫌・・・ 森鴎外 「空車」
・・・彼らの内に勇ましい生活の戦士を見、生の意義を追い求める青年の焦燥をともにし得ると思った。彼らの雰囲気が青春に充ち、極度に自由であることをも感じた。彼らの粗暴な無道徳な行為も、因襲の圧迫を恐れない真実の生の冒険心――大胆に生の渦巻に飛び込み、・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫