・・・ 明治四十年代の荷風のデカダニズムはさきにふれたように、正面から日本の歴史的軛に抗議することを断念した性格のものであったし、大正年代に現われた谷崎潤一郎などのネオ・ロマンティシズムの要素も、同時代に擡頭した武者小路実篤のヒューマニズムと等・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ それから、ソヴェトでは女が生産単位としては全然男と対等な権利を有って、経済的に独立している。生産単位として女が全く男と同じ地位にいるという点で、その余のいろいろなものが、変って来るのは当然のことで、ただ他の国の婦人参政権、あれとソヴェ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・日本の国際感覚には、後進国らしくそして封建くさく、仲間入りさせて貰える、仲間入りするようになった、という要素が案外につよい。対等につき合うことは既定の事実で、それからさき、どうつき合うかが問題であるヨーロッパの国際性とはちがった気分が流れて・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・ その一つの原因は、婦人作家の擡頭ということにつれて、諸家の見解がのべられているのに、何となく十分現実を掘り下げていない感銘を受けたからでもある。 婦人作家がこの一年に比較的数多い作品を発表もしたのは一般に高まった文学性への要求と婦・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・ アーネストのおとなしい、女を男と対等に扱うしか知らない青年の素直な魅力はアグネスをとらえる。彼と話すこと、遊ぶこと、笑うこと、それ等は十九歳になろうとするアグネスの外見は粗野で傍若無人のような胸の底につよい憧れとなっている美、優雅、恋・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・彼女の誠実を目醒すだけの力が、民衆の生活に擡頭して来たのである。しかしながら、バックの中国に対する認識のつきつめたところには、東は東、西は西という考えがある。中国が東は東として自主的に民族の複雑な課題を処理してゆくべきであり、イギリスやアメ・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・布袋というものに人格化された福々しさが、厭味なく、春風駘蕩と表現されて居る。云うに云われぬ楽しさ面白さ、という表情を以て無邪気極りなく格子の奥に笑って居る。 大観門の左右にあった、高さ凡そ二尺二三寸の下馬じるしを意味する一対の石の浮彫も・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・もし民法で新しくきめられた婦人の社会的平等、人間らしい対等の権利を具体的なものにするなら、もうきょうの社会のなかで民法の条項が改正されただけでは意味がない。男と女とがその勤労によって生きなければならない労働に関係あるすべての法律で、男女は平・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ 自分は黙って、窓際の長卓子の彼方に坐り、正面から三人を見る位置になった。 対等で、真面目に話し合わず、母は気位を以て亢奮し、Aは涙を出し、父が、誘われたようにして居られる光景は、充分私の心を痛めるものだ。 Aが「斯う云う風・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・ 今、われわれの棲む地球で、男女が社会の生産の単位として対等に見られ、その上ほんものの母性保護によって現実に保護されているのはソヴェト同盟だけだ。 では、そのプロレタリア革命を経験し社会主義の社会を建設しているソヴェト同盟で、婦・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
出典:青空文庫