・・・そして小さい日本が大国と戦争して勝ち、つよくて金のある列強と対等のつき合いをし、応分の植民地分割にあずかるということに国内の現実からは消えた、四民平等の夢をつないだのであった。 事実、戦争がはじめられたとき、日本の人民は、はじめて権力に・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ところが敗戦してポツダム宣言を受諾した時、日本は連合諸国から戦争犯罪国として、対等の国際的自立性を奪われた。私達祖国を愛する者は、この戦争の結果を悲しい心で受取った。そして、或る人々はきっと思ったに違いない。昔から喧嘩両成敗という言葉がある・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・次に本郷弓町の寄合衆本多帯刀の家来に、遠い親戚があるので、そこへ手伝に往った。こんな風に奉公先を取り替えて、天保六年の春からは御茶の水の寄合衆酒井亀之進の奥に勤めていた。この酒井の妻は浅草の酒井石見守忠方の娘である。 未亡人もりよも敵の・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・処女の波は彼の胸の前で二つに割れると、揺らめく花園のように駘蕩として流れていった。 横光利一 「街の底」
・・・今やその隠忍から擡頭せるものは彼らである。勝利の盃盤は特権の簒奪者たる富と男子の掌中から傾いた。しかし吾々は、肉迫せる彼ら二騎手の手から武器を見た。彼らの憎悪と怨恨と反逆とは、征服者の予想を以て雀躍する。軈て自由と平等とはその名の如く美しく・・・ 横光利一 「黙示のページ」
・・・ 早雲と同じころに擡頭した越前の朝倉敏景も注目すべき英雄である。朝倉氏はもと斯波氏の部将にすぎなかったが、応仁の乱の際に自立して越前の守護になった。そうして後に織田信長にとっての最大の脅威となるだけの勢力を築き上げたのである。『朝倉敏景・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫