・・・未来派は心象のテンポに同時性を与える苦心に於て立体的な感覚を触発させ、従って立体派の要素を多分に含み、立体派は例えば川端康成氏の「短篇集」に於けるが如く、プロットの進行に時間観念を忘却させ、より自我の核心を把握して構成派的力学形式をとること・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・ その時己はこの男の名を問うたが、なぜそんな事をしたのだか分からない。多分体格の立派なのと、項を反せて、傲然としているのとのためであっただろう。「エルリングです」と答えて、軽く会釈して、男は出て行った。 エルリングというのは古い・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
・・・そして自分の人間と作物との内に多分の醜い affectation を認める。私はこれまで何ゆえにそれに気がつかなかったかを自分ながら不思議に、また腹立たしく思う。affectation が何であるか、それがどういう悪い根から生いでて来るか、・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫