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・・・部屋には炭酸瓦斯が溜り出した。再び体温表が乱れて来た。患者の食慾が減り始めた。人々はただぼんやりとして硝子戸の中から空を見上げているだけにすぎなかった。 こうして、彼の妻はその死期の前を、花園の人々に愛されただけ、眼下の漁場に苦しめられ・・・
横光利一
「花園の思想」
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・・・そこでは吐き出された炭酸瓦斯が気圧を造り、塵埃を吹き込む東風とチブスと工廠の煙ばかりが自由であった。そこには植物がなかった。集るものは瓦と黴菌と空壜と、市場の売れ残った品物と労働者と売春婦と鼠とだ。「俺は何事を考えねばならぬのか。」と彼・・・
横光利一
「街の底」