・・・であるかも知れぬ、芭蕉蕪村などあれだけの人でも殆ど著述がない、書物など書いた人は、如何にも物の解った様に、うまいことをいうて居るが、其実趣味に疎いが常である、学者に物の解った人のないのも同じ訳である、太宰春台などの馬鹿加減は殆どお話にならん・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・であるかも知れぬ、芭蕉蕪村などあれだけの人でも殆ど著述がない、書物など書いた人は、如何にも物の解った様に、うまいことをいうて居るが、其実趣味に疎いが常である、学者に物の解った人のないのも同じ訳である、太宰春台などの馬鹿加減は殆どお話にならん・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・が、太宰治氏に教えられたことだが、志賀直哉氏の兎を書いた近作には「お父様は兎をお殺しなされないでしょう」というような会話があるそうである。上品さもここまで来れば私たちの想像外で、「殺す」という動詞に敬語がつけられるのを私はうかつに今日まで知・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・が、太宰治氏に教えられたことだが、志賀直哉氏の兎を書いた近作には「お父様は兎をお殺しなされないでしょう」というような会話があるそうである。上品さもここまで来れば私たちの想像外で、「殺す」という動詞に敬語がつけられるのを私はうかつに今日まで知・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・ 私は目下上京中で、銀座裏の宿舎でこの原稿を書きはじめる数時間前は、銀座のルパンという酒場で太宰治、坂口安吾の二人と酒を飲んでいた――というより、太宰治はビールを飲み、坂口安吾はウイスキーを飲み、私は今夜この原稿のために徹夜のカンヅメに・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・ 私は目下上京中で、銀座裏の宿舎でこの原稿を書きはじめる数時間前は、銀座のルパンという酒場で太宰治、坂口安吾の二人と酒を飲んでいた――というより、太宰治はビールを飲み、坂口安吾はウイスキーを飲み、私は今夜この原稿のために徹夜のカンヅメに・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・僕は昔から太宰治と坂口安吾氏に期待しているが、太宰氏がそろそろ大人になりかけているのを、大いにおそれる。坂口氏が「白痴」を書かない前から、僕は会う人ごとに、新人として期待できるのはこの人だけだと言って来たが、僕がもし雑誌を編輯するとすれば、・・・ 織田作之助 「文学的饒舌」
・・・僕は昔から太宰治と坂口安吾氏に期待しているが、太宰氏がそろそろ大人になりかけているのを、大いにおそれる。坂口氏が「白痴」を書かない前から、僕は会う人ごとに、新人として期待できるのはこの人だけだと言って来たが、僕がもし雑誌を編輯するとすれば、・・・ 織田作之助 「文学的饒舌」
・・・川端氏、太宰氏の作品のうらにあるものは掴めるが、ああ、やってるなと思うが、もう白鳥、百間となると、気味がわるくてならない。怖い作家だ、巧いなあと思う作家は武田麟太郎氏、しかもこの人の巧さはどぎつくない。この人の帰還がたのしみである。この人が・・・ 織田作之助 「わが文学修業」
・・・川端氏、太宰氏の作品のうらにあるものは掴めるが、ああ、やってるなと思うが、もう白鳥、百間となると、気味がわるくてならない。怖い作家だ、巧いなあと思う作家は武田麟太郎氏、しかもこの人の巧さはどぎつくない。この人の帰還がたのしみである。この人が・・・ 織田作之助 「わが文学修業」
出典:青空文庫