・・・を表象するような他のカットのそうにゅうで置換したらあの大切なクライマックスがぐっと引き立って来はしないかと思われる。 両国の花火のモンタージュがある。前にヤニングス主演の「激情のあらし」でやはり花火をあしらったのがあった。あの時は嫉妬に・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ただその先生の平生の勉強ぶりから推して考えてみると、映画の享楽の影響から自然学問以外の人間的なことに興味を引かれるようになり、肝心の学問の研究に没頭するに必要な緊張状態が弛緩すると困るということを、こういう独特な言葉で言い現わしたのではない・・・ 寺田寅彦 「映画と生理」
・・・ 世の中の人の心は緊張と弛緩の波の上に泛っている。正と負の両極の間に振動している。「善行日」ばかりを奨励するのも考え物ではあるまいか。少なくとも「悪行日」をこれと並行錯雑させて設けてみるのも一つの案ではあるまいか。昔の為政家は実際そ・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ こんな実例から見ると、こうした種類の涙は異常な不快な緊張が持続した後にそれがようやく弛緩し始める際に流れ出すものらしい。 うれし泣きでも同様である。たいてい死んだであろうと思われていたむすこが無事に帰ったとか、それほどでなくとも、・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・それでせっかくこんなに子供のように笑ったあとで、それから後のプログラムの名優達の名演技を見て緊張し感嘆し疲労するのは、少なくも今日の弛緩の半日の終曲には適しないと思ったので、すぐに劇場を出て通りかかった車に乗った。車はいつもとちがう道筋をと・・・ 寺田寅彦 「初冬の日記から」
・・・その奇妙な感じを完全に分析して説明する事は到底不可能であるが、種々雑多な因子の中にはもちろん緊張の弛緩から来る純粋な笑いもあった。そこここに実際クスクス笑いだした不謹慎な人もあったようであった。しかしそれは必ずしも文学士その人に向けられた笑・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・ このように楽器の部分としての手首、あるいはむしろ手首の屈曲を支配する筋肉は、少しも強直しない、全く弛緩した状態になっていて、しかもいかなる微細の力の変化に対しても弾性的に反応するのでなければならないのである。 この手首の自由の問題・・・ 寺田寅彦 「「手首」の問題」
・・・ 余談はしばらくおいて、AB、AC、AD……の関係、なお念のために比較の主客を置換してBA、CA、DA……の関係の濃度に対するだいたいの比較的の数値を定める事ができたとすれば、少なくもここにABという一つの「鎖の輪」が、従来よりはやや科・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・紙の尺度や竹の尺度などを比較させて見るもよかろうし、また十グラムの分銅二つと二十グラムの分銅一つとを置換して必ずしも同じでない事を示し、精密なる目的には尺度の各分劃、分銅の各個につき補正を要する事や、温度による尺度の補正などの事も、少なくも・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・そういう断続的の緊張弛緩の交代が、生理的に「笑い」の現象と密接な類似をもっている。従って笑いによく似た心持ちを誘発し、それがほんとうの笑いを引き出す。とこういうような事ではないだろうか。こう思って自分の場合に当たってみるとある程度まではそれ・・・ 寺田寅彦 「笑い」
出典:青空文庫