・・・一九三三年の夏、わたしは、幾度か荏原の労働者地区にあった無産者托児所へゆきそのぐるりのお母さんたちの生活にふれた。職場の人々との会合の、字では書いておくことのできなかった記録を整理した。そして八九十枚まで、小説としてかきはじめた。 とこ・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・お母さんが病気をしたり姙娠した場合は、働いている人の妻であり、勤労者の妻である、組合員の妻であるということで、組合から地区の病院、産院、或は健康相談所でもって癒して貰える、姙娠すればちゃんと四ヵ月手当がついて休暇も貰える、娘が結婚すればそれ・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・「地区の人々」「転換時代」について、われわれの学ぶところもそこであると思う。例えば、「地区の人々」をよんで、読者諸君はあの作品が従来の同志小林の作品に比べて、大変落付きがあり、文章にまでも大らかな確乎性が漲りはじめていることを感じたであ・・・ 宮本百合子 「小説の読みどころ」
・・・たとえば、ドニェプルの大発電所は、第一次五ヵ年計画時代の全ソヴェト人にとってじつに愛着と誇りの象徴であったが、ナチス軍がドニェプル地区に侵略してくる危険が迫ったとき、大発電所はそれを建設した労働者の手によって破壊された。その記事を新聞でよん・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・このPTAの成功は、文教地区を道徳的に清潔に保つことを政府に理解させた。このPTAの親たちは、みんな子供の将来について、人間らしい豊かさ、正しく生きる者を育てたいという希望を抱いている人々である。親としてのそういう希望が、まちがっていないこ・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・で、工場に属さずに地区的になっている。 この「大クラブ」は産別は違っても、その地区の住民――勿論労働者だ――は利用することが出来る。例えばある地区に大きな金属産業の「クラブ」があるとすると、その地区に住んでいる繊維の労働者もこれを利用す・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの「労働者クラブ」」
神奈川県足柄郡下足柄村十三部落 演習中の野宿反対 人家に迷惑をかけず宿やにとめろ 宿舎のない演習なんかやめたがいいんだ。○江東地区の一人、暗闇夜、自転車をとばして地区のデンタンを電車・乗合自動車のうしろ・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
・・・地図の上で指されるそれらの地区は本郷区のぐるりのどこかに隣接してはいてもうちのある林町界隈までは距っていた。心配は直接本郷あたりが襲撃されることではなくて、思いがけず大規模の被害が生じたときその真中に安全な本郷、またはこの辺が、逃げ場のない・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・ 三月号『改造』に同志小林は「地区の人々」という小説を発表している。 この小説は、革命的伝統をもった北海道の労働者街の人々が、再び「戦争と革命の時期」である今日、抑圧から立ち直ってプロレタリアートの組織をつくることを書いたもので・・・ 宮本百合子 「同志小林多喜二の業績」
・・・三月号『改造』にのった同志小林の小説「地区の人々」の読後、杉山氏はその作品を「下降的」なものと感じ、この感想を洩らしているのである。果して実際そうであろうか? 成程「地区の人々」は終りになればなるほど小説としての具象性を描写の上に失・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
出典:青空文庫