・・・文芸家は世間からこの問題を呈出されるからして、いろいろの方便によって各自が解釈した答案を呈出者に与えてやるに過ぎんのであります。答案が有力であるためには明暸でなければならん、せっかくの名答も不明暸であるならば、相互の意志が疏通せぬような不都・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・単なる形式論理の立場からは、如何なる問題にても呈出することができる。しかしそれは学問的問題となるのではない。問題は、我々の自己が真実在の自己表現の過程となる所から起るのである。答は問所にありとも考えられる。 我々の知識は単なる物の世界か・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・だから、いきなり新宿のカフェーであばずれかかった女給としておふみが現れたとき、観客は少し唐突に感じるし、どこかそのような呈出に平俗さを感じる。このことは、例えば、待合で食い逃げをした客にのこされたとき、おふみが「よかったねえ!」と艶歌師の芳・・・ 宮本百合子 「「愛怨峡」における映画的表現の問題」
・・・今ここに提出されているいくつかの問題を、事実上私たちの発意と、集結された民主力とで、一歩ずつ解決に押しすすめてゆく、その一足が、私たちの眼路はるかに、広々とした民主日本、封建から解かれ、美しく頭をもたげた日本女性の立ち姿を予約しているのであ・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・この婦人たちの生活こそ、男女の新しい意味での社会的な協力ということについて深刻な問題を提出していると思う。社会が封建的であればあるほど妻の境遇も苦しいが、また未亡人の立場は切なく、生きにくい。良人がいる生活の中では、男手一つにしろ何とかなる・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・持法の犠牲となった作家たちが、転向の動機を、めいめいの個人的性格の問題、インテリゲンチアと勤労大衆との間にある思想的ギャップ――インテリゲンチアの観念性という理由づけで、作品化したことについての疑問を提出したことは誤っていない。それぞれの人・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・なもの、無邪気なもの、天真爛漫な人生前期と提出している点、作者は極めて非プロレタリア的である。バイブルが「手袋なしには持てぬ」代物である通り、ブルジョア世界観によって偽善的に、甘ったるく装われ、その実は血を啜る残虐の行われている「子供の無邪・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ こういう無駄口はきくが、インガが第三交代の婦人労働者達に約束した托児所増設のための図面は、場所がないと云って、提出しない。「私、今日出して下さるように願っておきましたよ。」「御存じでしょうが……」「どうして? こしらえなか・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・などを凌駕する、どのような作品が農民作家によって呈出されたであろうか? ファジェーエフは「ラップ」の作家だ。イワノフは同伴者作家として、まだ新鮮な力のあった時分「装甲列車」を書いた。赤軍も、農民とは切りはなせない。なぜなら、赤軍は労働者・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・等が晦渋に呈出されつつある一方で、万歳と漫談、とりとめなくエロティックな流行歌とが異常な流行を見た時であった。文学における「嗚呼いやなことだ」と一味通じて更にそれを、封建時代の日本ユーモア文学の特徴である我から我頭を叩いて人々の笑いものとす・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫