・・・へ巧みにつけ入って、ドイツ民族の優秀なことや、将来の世界覇権の夢想や、生産の復興を描き出したヒトラー運動は、地主や軍人の古手、急に零落した保守的な中流人の心をつかんで、しだいに勢力をえ、せっかくドイツ帝政の崩壊後にできたワイマール憲法を逆転・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・中国も、帝政時代のロシヤも、人民の文化水準は全く低くて、文盲率が非常に高くありました。中国では、日本の侵略に抵抗して、「抗戦救国」というスローガンがあらゆるへんぴな村々の壁にはられました。そして村人たちはゲリラを闘い日本軍の惨虐に耐えました・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 発表当時、会話が棒ではじまっていたり、くせのあるてにをはがつかってあったりした部分は、不必要な漢字と一しょにこのたび訂正されている。当時伏字にされて今日ではうずめられないところは、その要旨を附記してそのままにされている。終りには「社会・・・ 宮本百合子 「あとがき(『モスクワ印象記』)」
・・・と、はっきり大衆の立場から、裁判長の半畳を訂正します。もう何とも裁判長は音が立たないのです。高岡只一が凡そ四時間に亙って陳述した間、裁判長はただ数度小さい言葉尻をとらえて、それで威厳でも示そうとするようにこけ脅しめいた文句を云いましたが、誰・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・ 九月中には、胚胎を訂正し、次の月には、何か一つ出来たら書き、若し出来兼ねたら、鈍色の夢をも一度見なおさねばならない。 その時はかなり熱して書いたものも、今になると、あきたらぬ節が思いの外に多いのに失望する。 それは、私にとって・・・ 宮本百合子 「偶感」
・・・――文盲は勤労者の恥だ―― 大体、革命までロシアは世界で有名な文盲率の高い国だった。帝政ロシアの支配者たちは搾取に反抗されるのがこわくて、勤労者には高い税で政府が儲けることのできる火酒と坊主をあてがってばかりいた。農村、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・今十八歳のコムソモールの心持が帝政時代に十八歳であったものに、果して、わが心のように理解出来るであろうか? わかるばかりでなく、若い彼等のもっている曇らざる率直さ、科学への関心、健康な意志と、骨身について育っている集団性、国際感情などを、自・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・革命博物館には、種々様々の革命的文献の他に帝政時代、政治犯が幽閉されていた城塞牢獄の監房の模型が、当時つかわれた拷問道具、手枷足枷などをつかって出来ている。茶っぽい粗布の獄衣を着せられた活人形がその中で、獣のような抑圧と闘いながら読書してい・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・坪内雄蔵氏の注意で、二百何十枚かあったところを百五十枚ほどに整理し、かなづかいや字のあやまりを訂正した。題をそのとき「貧しき人々の群」とつけ直した。 今日よみかえしてみると、「貧しき人々の群」はいかにも十八歳の少女の作品らしい稚なさ、不・・・ 宮本百合子 「作者の言葉(『貧しき人々の群』)」
・・・本館の帝政時代のままの埃及式大装飾の中に、大使はぽつねんと日本の皮膚をちぢめて暮している。事務所は、離れた低い海老茶色の建物で、周囲の雪がいつも凍っている。今日は雪が氷の上に降った。 白いタイル張りの暖炉があって、上に薬罐がのっている。・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
出典:青空文庫