・・・ 日本のプロレタリア革命が民主主義革命の内から急速に転化されるものであるという解釈は、決して民主主義革命の何十年かが持続した後にプロレタリア革命に展開するであろうという見透しの上にはない。プロレタリア・農民・一般勤労階級を資本主義第三期・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・ ものごとの実体が一つのものから他のものへと転化してゆく瞬間は、何という機微だろう。 私たちは笑いの功徳を十分知っている。それだからといって、もし始終笑うことしか知らない人を見たら、誰しもそれを正常な心理の人として見ることは不可能で・・・ 宮本百合子 「文学は常に具体的」
・・・(左翼芸術運動における理論的統一のための論争、芸術理論の質的高揚と転化、全日本無産者芸術団体協議会の結成、日本プロレタリア文化連盟 第四期一九三二年後半から一九三四年三月頃まで。 第五期一九三四年後半より今日・・・ 宮本百合子 「『文芸評論』出版について」
・・・読者の内に新しい疑問をかき立てて、その人間が鏡をとって改めて自分の顔を見直さずにおられない程の不安を点火したり、その人の営んでいる今日の生活の底が、ああ破れてしまったと感じさせる程の震撼を与えることもない。山本有三氏の作品を読むと、人々は作・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・お互同士のほかに、苦情の訴えどころもなければ、責任を転嫁する対手もないのだから。同様に、離婚の自由があるということは、従来の「家」での離婚沙汰よりはるかに深い人間的分離を意味することと、わたしたちは真面目に理解しなければならない。 家庭・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・共同に経験される歓び、そして現代では共同に忍耐され、さらにそれを積極的なものに転化してゆくつよい共同の意志と努力とが必要である。 私たちが生きているこの現実の中で、愛し合う可能の下におかれ、めぐりあった相手しか、現実に私たちの愛せるもの・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・それを積極的なものに発展させ、転化させようとする努力こそ必要である。〔一九三七年八月〕 宮本百合子 「私たちの社会生物学」
・・・予がもし小説家ならば、天下は小説家の多きに勝えぬであろう。かように一面には当時の所謂文壇が、予に実に副わざる名声を与えて、見当違の幸福を強いたと同時に、一面には予が医学を以て相交わる人は、他は小説家だから与に医学を談ずるには足らないと云い、・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
・・・ ―――――――――――――――― この秋は暖い暖いと云っているうちに、稀に降る雨がいつか時雨めいて来て、もう二三日前から、秀麿の部屋のフウベン形の瓦斯煖炉にも、小間使の雪が来て点火することになっている。 朝起きて・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・が問題とされるようになると、明白に道徳的な意味に転化して来る。そうしてそこで中心的な地位を占めるのは、自敬の念なのである。おのれが臆病であることは、おのれ自身において許すことができぬ。だからおのれ自身のなかから、死を怖れぬ心構えが押し出され・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫