・・・ ――戦死者中福井丸の広瀬中佐および杉野兵曹長の最後はすこぶる壮烈にして、同船の投錨せんとするや、杉野兵曹長は爆発薬を点火するため船艙におりし時、敵の魚形水雷命中したるをもって、ついに戦死せるもののごとく、広瀬中佐は乗員をボートに乗り移・・・ 国木田独歩 「号外」
十篇の応募作品をよんだ。出来・不出来はあるにしろ、そのどれもを貫いて流れているのは、日本の結核療養に必要な社会施設のとぼしさと、そこからおこる闘病の苦しく複雑な現実の思いである。ベティー・マクドナルドというアメリカの婦人作・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・ 幼いときから苦しい境遇に育って、永い闘病生活のうちに詩をつくって来た女詩人であり、統一された境地を今の心にうちたてている詩人である。 同じ題で六月の『新女苑』に過去の生活が書かれている文章もよんで、生活の困苦というものの女のうけた・・・ 宮本百合子 「『静かなる愛』と『諸国の天女』」
・・・ やがて、孝子夫人にとって、多くの忍耐と勇気とを求める闘病の時期がはじまった。新宿の病院にいらっしゃる頃は、思いながらつい折を得なくて、お会いしたのは、田園調布へ移られてからであった。 永年糖尿病をもって居られ、そこから生じた複雑な・・・ 宮本百合子 「白藤」
出典:青空文庫