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・・・老年になってからは、君前で頭巾をかむったまま安座することを免されていた。当代に追腹を願っても許されぬので、六月十九日に小脇差を腹に突き立ててから願書を出して、とうとう許された。加藤安太夫が介錯した。本庄は丹後国の者で、流浪していたのを三斎公・・・
森鴎外
「阿部一族」
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・・・「こんな奴置く位なら、石の頭巾冠ってる方が、ましじゃ。」 勘次は今が引き時だと思った。そして、そのまま黙って帰りかけると、秋三は彼を呼びとめた。「勘公、此奴をどうするつもりや。」「どうするって、こちゃ知らんわ。」「知らん・・・
横光利一
「南北」