・・・女の力は広汎な形で時局的な生産動員に向って招かれている。そして毎日、新聞で見る今日の銃後の女としての服装もエプロン姿から、たとえそれがもんぺいであろうと、作業服式のものであろうと、ひとしくりりしい裾さばきと、短くされたたもととをもって、より・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ 何の為にブルジョア国は結束して国際連盟までを動員し、ソヴェト同盟に向って世界戦争の下拵えをやっているか? なぜ、世界のプロレタリアートは、それに対してソヴェトを守れ! と叫ばずには居られないか? それ等のことを我々は知らなければな・・・ 宮本百合子 「若者の言葉(『新しきシベリアを横切る』)」
・・・画家も、作家も、キネマの製作者も総動員を受けた。彼等芸術労働者は、新しいソヴェト生産拡張の現実、それにつれていちじるしい変化を生じた労働者農民の日常の生活状態、社会的感情などを芸術の内にいきいきと再現し、さらに芸術を通して民衆の階級的自覚を・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・アナーキスト出身で著名な婦人作家で、その才能の素質と妻としておかれている偽瞞的な環境のためにアナーキズムから社会観を本質的に高められることができず、労働者弾圧にも動員される右翼の暴力団の生活に近接する機会をもつようになって、その描きてとして・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・ところが、当時の情報局文化統制は、講談社、主婦之友を極端な軍国主義に動員することで好戦意識を宣伝していたから、谷川氏の平衡論はその現実のなかで、日本のより高い理性をもつ文化能力を抹殺する理論づけになった。戦争について意見をもつ文化は、少数者・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ メーデーに家にひっこんでいるソヴェト勤労者が一人もいないように、よろこばしいメーデーのために動員されない芸術家というものもない。 たとえばレーニン廟の板がこいに誰があんな壁画を書いただろうか。 プロレタリア画家達だ。メーデーが・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ 戦争強行が進むにつれ、反動文学者たちはしだいに軍人や役人めいた身構えをとって、大規模に文学者を動員し、さまざまの形で軍事目的に使った。ともに従順でないもの、戦争の本質に洞察をもつ者、文学を文学として護ろうとする者を沈黙させ、投獄した。・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・また学校の教育方針が急に変って、今までは自分の好きな髪に結って居ってもよかったのが、勇ましい髪形をしなければならなくなったり、千人針に動員されたことから次第に、動員の程度がひどくなって、終りには学校工場に働いたり、また実際に工場に行って暮し・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・一応の常識に、半信半疑という驚きで受けられた乃木夫妻の死は、あと三日ほどの間に、鴎外の心の中で、その行為として十分肯ける内的動因が見出されたのであろう。夫妻の生涯をそこに閉じさせたその動因は、老いた武将夫妻にとっての必然であって、従って、な・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ われわれは工場新聞と各職場の壁新聞を動員して、少くとも九百人の文学衝撃隊が集められるだろうと思う。 どんなことがあっても、それより少いことが、あっちゃならない。 われわれは、生産経済計画を百パーセントに充すとともに、文化戦線を閑却・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
出典:青空文庫