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・・・末の冬子は線香花火や千代紙やこまごました品を少しずつしか買わないので、配当されたわずかな金が割合に長く使いでがあるようであった。そういう事実は多少小さな姉や兄の注意をひいているらしかった。 学校へ出ている子等は毎朝復習をしていた。まだ幼・・・
寺田寅彦
「小さな出来事」
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・・・ 小諸で暮すようになったその年、若い詩人で塾の教師である藤村は、冬子夫人と結婚した。「小諸へ行ってから更に大いに心を安んずることが出来た。」と書いている。落梅集に「枝うちかはす梅と梅」「めぐり逢ふ君やいくたび」「あゝさなり君の如くに」「・・・
宮本百合子
「藤村の文学にうつる自然」