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・・・愛を表現しようとする心の望みが高まったとき、私たちはどうしてその熱情に応じて花咲き、匂う自身の肉体を否定したり、そこに獣を見たりしよう。人間の感能がこのように微妙に組織されており、機能がしかく精密であるということには、それにふさわしく複雑で・・・
宮本百合子
「若き世代への恋愛論」
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・・・彼女の美しさは、昔秀吉が恋着した母の美しさを匂うばかりの若さのうちに髣髴させた。年齢の相異や境遇の微妙さはふきとばして、彼女を寵愛した。錦に包まれて暮しながら、お茶々といった稚い時代から、彼女の心に根強く植付けられていた「猿面」秀吉に対する・・・
宮本百合子
「私たちの建設」