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・・・傍目もふらぬそれぞれの人間と事象との在りようを、作者がまた傍目もふらず跟いて行く、その熱中の後姿に、文学に於ける人間再生の熱意、ヒューメンなものが認められるという工合でもあった。 知性の作家と呼ばれた阿部知二がこの時期に発表した「冬の宿・・・
宮本百合子
「昭和の十四年間」
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・・・ 元来、品川の伯父さんと呼ばれた方が、事業上の熱意のほかにどんな趣味をもって居られたかは知らないが、孝子夫人の母上、現子夫人は、今日高齢にかかわらず、猶読書が唯一のたのしみとなっている方である。兄上の谷口辞三郎氏は、早い頃フランス文学を・・・
宮本百合子
「白藤」