・・・ にわかにぱたっと楽長が両手を鳴らしました。みんなぴたりと曲をやめてしんとしました。楽長がどなりました。「セロがおくれた。トォテテ テテテイ、ここからやり直し。はいっ。」 みんなは今の所の少し前の所からやり直しました。ゴーシュは・・・ 宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」
・・・ ところが雨はまもなくぱたっとやみました。五六つぶを名残りに落してすばやく引きあげて行ったという風でした。そして陽がさっと落ちて来ました。見上げますと白い雲のきれ間から大きな光る太陽が走って出ていたのです。私どもは思わず歓呼の声をあげま・・・ 宮沢賢治 「谷」
・・・ごくとしよりの馬などは、わざわざ蹄鉄をはずされて、ぼろぼろなみだをこぼしながら、その大きな判をぱたっと証書に押したのだ。 フランドンのヨークシャイヤも又活版刷りに出来ているその死亡証書を見た。見たというのは、或る日のこと、フランドン農学・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
出典:青空文庫