・・・草の中には、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、ある葉は青くすかし出され、ジョバンニは、さっきみんなの持って行った烏瓜のあかりのようだとも思いました。 そのまっ黒な、松や楢の林を越えると、俄かにがらんと空がひらけて、天の川がしらしらと・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・その人は、あわてたのをごまかすように、わざとゆっくり、川をわたって、それから、アルプスの探険みたいな姿勢をとりながら、青い粘土と赤砂利の崖をななめにのぼって、せなかにしょった長いものをぴかぴかさせながら、上の豆畠へはいってしまった。ぼくらも・・・ 宮沢賢治 「さいかち淵」
二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二疋つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、あるいておりました。「ぜんたい、ここらの・・・ 宮沢賢治 「注文の多い料理店」
・・・びっくりして屈んで見ますと、草のなかに、あっちにもこっちにも、黄金いろの円いものが、ぴかぴかひかっているのでした。よくみると、みんなそれは赤いずぼんをはいたどんぐりで、もうその数ときたら、三百でも利かないようでした。わあわあわあわあ、みんな・・・ 宮沢賢治 「どんぐりと山猫」
・・・ニッケル鍍金でこんなにぴかぴか光っています。ここの環の所へ足を入れるとピチンと環がしまって、もうとれなくなるのです。もちろんこの器械は鎖か何かで太い木にしばり付けてありますから、実際一遍足をとられたらもうそれきりです。けれども誰だってこんな・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・それは雲の峯がみんな崩れて牛みたいな形になり、そらのあちこちに星がぴかぴかしだしたのです。 ひなげしは、みな、しいんとして居りました。 ひのきは、まただまって、夕がたのそらを仰ぎました。 西のそらは今はかがやきを納め、東の雲の峯・・・ 宮沢賢治 「ひのきとひなげし」
・・・ 木なんかみんなザラメを掛けたように霜でぴかぴかしています。「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。」 四郎とかん子とは小さな雪沓をはいてキックキックキック、野原に出ました。 こんな面白い日が、またとあるでしょうか。いつもは歩けない黍の・・・ 宮沢賢治 「雪渡り」
・・・そして疲れて帰ってその上台所をぴかぴかに出来ぬし、夜の九時からお料理でもなく、矢張り男の人の様なお腹の充たし方をして寝なければならない。女の人の場合には、そのことが男と違う感じで自分に感じられましょう。何か、自分が粗くなって行くような、湿い・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・ 農業休みに十日か二十日の東京見物に出かけたものは、只にぎやかな町の様子、はやしたてて居る見世物、目のさめる様な店飾りにイルミネーション、立派な装で自動車を飛ばせて行く人、ぴかぴかに光った頭の婦人、その他あれやこれや、只もうにぎやかなパ・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫