-
・・・無口ではなかったけれど、ぶつくさした愚痴や小言は口にしなかった。常磐津の名取りで、許しの書きつけや何かを、みんなで芸者たちの腕の批評をしていたとき、お絹が道太や辰之助に見せたことがあった。「なるほどね、二流三流どこは、こんなことをして田・・・
徳田秋声
「挿話」
-
・・・ 保護室でぶつくさ、暗く、反抗的に声がした。「ひっぱりようがこの頃と来ちゃア無茶だもん。うかうか往来も歩けやしねえや」 満州で侵略戦争を開始し、戦争熱をラジオや芝居で煽るようになってから、皮肉なことにカーキ色の癈兵の装で国家のた・・・
宮本百合子
「刻々」