・・・ 斎場を出て、入口の休所へかえって来ると、もう森田さん、鈴木さん、安倍さん、などが、かんかん火を起した炉のまわりに集って、新聞を読んだり、駄弁をふるったりしていた。新聞に出ている先生の逸話や、内外の人の追憶が時々問題になる。僕は、和辻さ・・・ 芥川竜之介 「葬儀記」
・・・楽屋落ちのようだが、横に拡がるというのは森田先生の金言で、文章は横に拡がらねばならぬということであり、紅葉先生のは上に重ならねばならぬというのであった。 その年即ち二十七年、田舎で窮していた頃、ふと郷里の新聞を見た。勿論金を出して新聞を・・・ 泉鏡花 「おばけずきのいわれ少々と処女作」
・・・黒岩涙香、森田思軒などの、飜訳物をも、好んで読む。どこから手に入れて来るのか、名の知れぬ同人雑誌をたくさん集めて、面白いなあ、うまいなあ、と真顔で呟きながら、端から端まで、たんねんに読破している。ほんとうは、鏡花をひそかに、最も愛読していた・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・黒岩涙香、森田思軒などの飜訳をも、好んで読む。どこから手に入れて来るのか、名の知れぬ同人雑誌をたくさん集めて、面白いなあ、うまいなあ、と真顔で呟きながら、端から端まで、たんねんに読破している。ほんとうは、鏡花をひそかに、最も愛読していた。・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・例をあげよとならば、近ごろ見たものの中では森田草平の「のんびりした話」の中にある二三の体験記録などはいかなる点でも創作であり内容的には立派な小説でもあり戯曲でもあると考えられるのである。もっとも、こういう体験記は「創作」でないという説もある・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ふりかえれば森田の母子と田中君なり。連れ立って更に園をめぐる。草花に処々釣り下げたる短冊既に面白からぬにその裏を見れば鬼ころしの広告ずり嘔吐を催すばかりなり。秋草には束髪の美人を聯想すなど考えながらこゝを出でたり。腹痛ようやく止む。鐘が淵紡・・・ 寺田寅彦 「半日ある記」
・・・午後、Van Cautland Park. 二十日 岩本さんと森田さんとに会う、青い着物でイースターの休みがすむ。 二十三日 森田さんと岩本さんが来たので、Aを呼んで食事をすることにし、チョプスイに行き、かえりにゆっくり Ri・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
六十八歳になられた作家森田草平氏が入党されたということは、多くの人にいろいろと語りかけるいみを持っています。人間は理性のある限り、年齢にかかわらず正しいと思う生活に前進するものであるという愉快な一つの例でもあります。早く老・・・ 宮本百合子 「心から送る拍手」
・・・の債鬼追っ払いをした時代であり、日本文学の動向に於てかえり見ると、これは明瞭な指導性をもつ文芸思潮というものが退潮して後、しかも今日では被うべくもない文化に対する統制が次第に現れようとする時であった。森田たま氏の「もめん随筆」などが目前の興・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・という記事があり、山川菊栄、森田たま、河崎なつの諸名流女史が夫々執筆していられる。河崎なつ氏をのぞいて、他の二人、特に山川菊栄女史の文章は面白い。女史は「先ず手近から」男を観察し、女中の留守には自分の洗ったお茶碗を傍で拭き、得意の庖丁磨きを・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
出典:青空文庫