・・・たとえば五穀の収穫や沿海の漁獲や採鉱冶金の業に関しては農林省管下にそれぞれの試験場や調査所などがあって「科学的政道」の一端を行なっており、疫病流行に関しては伝染病研究所や衛生試験所やその他いろいろの施設があり、風水旱害に関しても気象台や関係・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ 冶金、紡織、園芸の起源や、音楽、舞踊の濫觴までもおもしろく述べてある。神の観念が夢から示唆され、それが不可解不可能なるすべての事情の持ち込み所に進化するという考えももらされている。そして結局宗教の否定が繰り返さるるのである。 ・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・夏になると、水泳場また貸ボート屋が建てられる処もあるが、しかしそれは橋のかかっているあたりに限られ、橋に遠い堤防には祭日の午後といえども、滅多に散歩の人影なく、唯名も知れぬ野禽の声を聞くばかりである。 堤防は四ツ木の辺から下流になると、・・・ 永井荷風 「放水路」
・・・若しそうならば――……ああ、あわれ あわれ彼等は 野禽の昔さえ 憶い出さないか? *大空は からりと 透きとおり風がそよぎ薔薇は咲き匂う今はよい 五月だ。されど、又来る冬を思うと・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・ モスク夕刊新聞所載 ストローヤの閉店時間 モスクのストローヤが僅にセントルで十二時まであるだけであとは八九時にしめてしまうため夜勤の労働者が熱い обед をたべられない モスソヴェートは附近の労働状態を考慮して閉店時間の延長を許・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・毎晩十一時、十二時まで。夜勤料は四割引、十時間で六時間分である。それで体をこわすような労働強化はやらぬことときめている。文選十六人は彼を入れすぐ立ち、六時の夕飯三十分の休みに、文選十六人はベン当箱をもって一つところに集り、きめた以上の仕事は・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
出典:青空文庫