・・・「その後富士司の御鷹は柳瀬清八の掛りとなりしに、一時病み鳥となりしことあり。ある日上様清八を召され、富士司の病はと被仰し時、すでに快癒の後なりしかば、すきと全治、ただいまでは人をも把り兼ねませぬと申し上げし所、清八の利口をや憎ませ給いけ・・・ 芥川竜之介 「三右衛門の罪」
・・・「――柳瀬が出ていた筈だ……」「私は元来美術家同盟では知らない人ばっかりだから分らない」 清水は無骨な指でひろげた号外をたたきながら云った。「……いや、皆わかってはいるんだがね」 それからさりげなく、「是枝操に会いま・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ そういう社会をお互に一日も早くつくりたいと、私もペンを武器とし仲間とともに働いているわけですが、K子の例でもわかるとおり、そういう自分が××株式会社の重役とかその弟とか、従弟とかというもの=柳瀬正夢の漫画の人物、所謂アミーになろうとは・・・ 宮本百合子 「ゴルフ・パンツははいていまい」
出典:青空文庫