・・・そうして周到な津浪災害予防案が考究され、発表され、その実行が奨励されるであろう。 さて、それから更に三十七年経ったとする。その時には、今度の津浪を調べた役人、学者、新聞記者は大抵もう故人となっているか、さもなくとも世間からは隠退している・・・ 寺田寅彦 「津浪と人間」
・・・そのために特別な科学的研究機関もあり、あまり理想的ではないまでもともかくも各種の研究が行なわれ、その結果はある程度まで有効に予防と消火の実際に応用されている。西部の森林地帯では「火事日和」なるものを指定して警報を発する設備もあるようである。・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・それがわからなくては根本的な治療や予防はできるはずがない。癌研究所と同様に国家癌の科学的研究所の設立も今日の国家の急務であるかもしれないのである。 十三 九月中旬になって東京の街路を飾るプラタヌスの並み木が何か思・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・ 罪悪の心理がもしほんとうに科学的な正確さをもって書き表わされていれば、それは読者にとってはかなり有益であり、そうしてそういう罪悪を予防し減少するような効果を生じるかもしれない。これに反して罪悪の外側のゆがんだ輪郭がいたずらに読者の病的・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・ 政治経済教育宗教学芸産業軍事その他ありとあらゆる方面にわたる現実の正確な知識を与え、一般の輿望に基づいて各当局の手の回らぬところを研究し補助して国家社会のあらゆる機関の円滑な融合を計るがために、こういう特別な一大組織を設けるという事は・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・室のなかがあんまり暖いとひびがきれるから、その予防なんだ。どうも奥には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、貴族とちかづきになるかも知れないよ。」 二人は壺のクリームを、顔に塗って手に塗ってそれから靴下をぬいで足に塗・・・ 宮沢賢治 「注文の多い料理店」
・・・もっともその中にもいろいろ派がありますが、まあその精神について大きくわけますと、同情派と予防派との二つになります。 この名前は横からひやかしにつけたのですが、大へんうまく要領を云いあらわしていますから、かまわず私どもも使うのです。 ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ しかも、日本の軍事的権力によって特別な保護をうけていた企業家たちは、生産の大半を婦人の労力によって行いながら、勤労婦人の福祉施設、母性保護設備、災害予防施設は行わずにきたのです。 今日、日本の組織労働者は四百万人あります。その半数・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・中には、赤ん坊にどう云う風にして湯をつかわせるか、台所の油虫はどんな薬で退治るかを教える映画や、性病予防の宣伝フィルムなどもあって、それを見ているうちに、ごく日常的であるが大切な衛生思想を覚え込むと云う場合が多くある。反宗教運動のために、労・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の芝居・キネマ・ラジオ」
・・・ ソヴェトの今の衛生の目標は予防ということ、病気になったものを手当するより、ならない前に手当するという主義で熱心にやっている。それだから子供でも赤ん坊の時に注意すること、それから生れる前に注意すること、それから子供をもつより先にお母さん・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
出典:青空文庫