・・・ ルポルタージュは観たこと、聴いたこと、感じたこと、即ち対象となる現実をひっくるめた人間生活諸相の報告であって、もとより平常では見られない珍らしいこと、スリルなこと、風土的エキゾチシズムが主要な部分ではない。 今日の所謂戦線ルポルタ・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・が、農業と工業との生産労働へ日夜接触して見ると、彼等は自身のリアリズムに多分の機械的マルクシズム、生産に対する知識階級的エキゾチシズムが混合していることを自覚して来たのであった。 ロシア・プロレタリア作家連盟が右翼「同伴者」の反革命的要・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・小松清氏というフランスにいたことのある人がホン訳したので、まだ二三頁をよんだにすぎませんがジャーナリスティックなものだし、又エキゾチシズムがつよい。フランスでエレンブルグが書いたものを思いおこさせました。私のバルザックについてかきたいところ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・先ず自分から民衆の一人となって、その日常の内へ入って、しかる後云々ということが、違った形での民衆性へのエキゾチシズム、感傷、自分の意識人としての本質の放棄としてあらわれて来るのである。「収獲以前」は、上に述べたような作者の知識人としての・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・に対して或るエキゾチシズムがのこされている程度である。新時代の中国の生活について最も多く知るべき筈でありながら、今日まだ十分知っていない。知るための十分な便宜をも欠いている。中国の文化に対して新しい理解と接近の機会をもち得るのはこれからであ・・・ 宮本百合子 「中国文化をちゃんと理解したい」
・・・民衆は現代の諸矛盾を八方からその身に受けて照りかえしつつ日々夜々を生きているのであって、自身の置かれているこの社会での場所を、昨今一部の作家が殆ど一種のエキゾチシズムをも加えて云うかと思われる民衆的なる総称の下に、強ち鼓腹撃壤しているのでも・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
出典:青空文庫