・・・まるでエレキでもかかって来るようだ。」 三 彼は中学を卒業してから、一高の試験を受けることにした。が、生憎落第した。彼があの印刷屋の二階に間借りをはじめたのはそれからである。同時にまたマルクスやエンゲルスの本に・・・ 芥川竜之介 「彼」
・・・「エレキの楊の木?」と私が尋ね返そうとしましたとき、慶次郎はあんまり短くて書けなくなった鉛筆を、一番前の源吉に投げつけました。源吉はうしろを向いて、みんなの顔をくらべていましたが、すばやく机に顔を伏せて、両手で頭をかかえてかくれていた慶・・・ 宮沢賢治 「鳥をとるやなぎ」
・・・電気――エレキへの科学者としての興味をひかれ、実験を試みたことから、幕末の平賀源内が幕府から咎めを蒙った事実も忘れ難い。科学博物館編の「江戸時代の科学」という本は、簡単ではあるが、近代科学に向って動いた日本の先覚者たちの苦難な足跡を伝えてい・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
出典:青空文庫